夢博士の独白



盗まれた車と美しい獣の夢、曖昧な記憶と記録された戦争、肥大化する球体と歪んだ顔

 一回目の「車」を盗まれた「夢」は、二回目の「夢」を盗んだ「車」よりも、遥かに鮮やかに蘇って来たのです。「建物」を取り囲むように併設された「駐車場」は、多層構造になっていて、それは、「建物」に寄生する「植物」のようにして、増殖する「悪意」を顕わにしていたのです。  
 私は「夢」の中の「車」を探すが、もちろん「夢」のような「車」など在ろうはずがない。ところが、私が三回目の「夢」に魅入ってしまったのか、遠くに「車」がボンヤリと視えて来たのです。それは、美しい「野獣」のように観えました。妖艶で妖麗で甘く切ない「気配」が漂う。その「気配」が忍び足となって、「音」も発てずにクスクスと、その「微笑」だけがポタポタと零れ落ちて行く。それは、虹色のガソリンの「揮発性」を仄めかしていたのです。  
 一方通行の「坂道」を駆け上がろうとするが、滑り落ちようとする「力」が働く。「私」と「車輪」が空回りを始めたのです。赤ランプの「警告」を無視はできない。抵抗勢力は殲滅せよとの「教皇」の御告げが、虚しく「枯葉」となって舞い落ちるが、誰も敢えて拾おうとはしない。誰も「接触」を試みようとはしない。「左」に回転する「坂道」を、ハンドルは無意識に「右」に切られようとしている。  
 「視界」が「外」に向かって拡がりを始めました。「駐車場」にも「難民」が押し寄せて来るに違いない。錆び付いた「鉄骨」で型取りされた「窓枠」には、忘れられた「戦争画」が荒々しい「筆触」で描かれ、立ち昇る「戦火」は一瞬で燃え上がっては、一瞬で消えて行く。火達磨となった「戦闘機」は重力で墜ちて行く。赤茶けた「駆逐艦」は自重で沈んで行く。そのとき初めて、運転している「私」に気付いたのです。「車」を盗んだのは、他ならぬ「私」でした。  
 赤い「野獣」のように、紅い「疾風」のようにして、駆け抜けて行こうとする「難民」の「夢」を、「車」は奪い取ろうとしている。彼等の「夢」を盗んだ「車」を、「私」は平然と、素知らぬ「顔」で運転している。そもそも「駐車場」は「屋上」に存在していたのだろうか。「記憶」はとても曖昧でした。それは、「戦争画」のように「記録」されることを、拒み続けて来たのです。  
 まるで「歩兵」のように、指揮系統から逸脱した「敗残兵」のようにして、徒歩の「私」は「屋上」を目指していました。私が「車」を何処かに乗り捨てたのか、それとも誰かに置き去りにされたのか、その「謎」は、「夢」の中で、あの深く暗い「霧」のような「世界」で、決められたに違いない。  
 「屋上」に再び呼び戻されると、今度は「中東」の疲れ切った「青空」が拡がり、あのゴム状の「球体」が肥大化していたのです。それは、「私」を押し潰すように巨大化する。「画家」と「医者」はすでに呑み込まれていました。彼等は「球体」の内部に視えるのだが、私との「境界」は「被膜」で塞がれ、息の出来ない「顔」が歪んで見えたのです。
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by artbears | 2018-09-30 12:31 | 連白
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