夢博士の独白



<   2016年 07月 ( 1 )   > この月の画像一覧


二枚の絵画の距離又は時間、歴史の終焉と出現した位相、過酷なる現実と衰弱する理想

 全体としての「左脚」の部分としての「左足」の先には、赤黒く「鬱血」を残した「中指」が、いつもの無表情な控え目さを取り戻していたのです。「中指」がピクッと頷く。それは生き物のように動いて、もう石のようには固くない。柔らかい優しい修復と回復の「時間」が経過したことを報せていたのです。
 一刻が一刻の上に加算されて、何かの拍子で一気に破算になる。「意識」の方向転換が、それを決めている。そして再び、何かが終わるために何かが始まろうとしている。「瞬間」は、次の「瞬間」のために生まれている。その巻戻しと先送りの加減算、その永遠の繰り返しが続いていたのです。そして突然、時の流れの「中間」が消えて、事の流れの「発端」と「結末」とが一体となって、私の目の奥に現われて来たのです。
 「発端」としてのプサンと「結末」としてのセザンヌ、二枚の「絵画」が、私の「視界」の両端に並んで視えたのです。その「距離」を測る。その「時間」を計る。両者の間には、一方向へと展開する「時間」の経緯が認められました。「秩序」と「構造」に対する「思考」の進化と深化が観て取れたのです。そこには、統合化されて表れる全体と、それを構成する部分との「関係」という、西欧絵画の「伝統」が脈々と流れていたのです。
 全体としての「絵画」の部分としての「表現」の先には、西欧近代絵画の「伝統」からの「離脱」という、米国現代美術の「目的」が見えて来ました。先ずは、イメージが「絵画」から追放されて、全体と部分との「関係」が解体される。次には、「物質」と「精神」が混然と融合して、強く激しい「情動」が表面を覆う。やがて「精神」の強度が「物質」を乗り越えて、カタルシスを迎える。その先には、殺伐とした都市の「光景」が、現実の物質世界の「地平」が拡がっていたのです。「時間」の連鎖は断たれて、「瞬間」が「絵画」に閉じ込められる。「絵画」の終焉が近付いていたのです。「歴史」が終わりを告げて、新たな「位相」が生まれようとしていたのです。
 ポロックを分岐点として、「現代」の芸術表現が「近代」とは異なる「位相」の上に成立していることは間違いない。その「位相」に逸早く移行したジャッドは、あらゆる「記憶」の喚起からも、いかなる「価値」の束縛からも自由でいて、一瞬にして全てを理解できる特別な「事物」を創造したのです。それは「記号」ではないし、単なる「物質」でもない。「精神」は「概念」に置き換えられて、特別な「事物」と純粋な「概念」との関係性の内側で、外側の「世界」を捉え直そうとしたのです。
 テキサスの広大な「平原」に巨大な三次元の「箱」が置き去りにされている。私は「夢」の中で、何枚かの「写真」を捲るようして、その「光景」を目撃したことを「告白」しなければならない。吹き抜ける「風」が知らせたのは、建設途中の都市空間の「断片」のような「気配」でした。否、建設は「放棄」されていたのかもしれない。
 コンクリートで固めた「箱」が棺桶のように見えてくる。都市文明の「死臭」が漂ってくる。私の「視線」は冷たく跳ね返される。ジャッドの抱いた合理性と効率性の「象徴」としての「都市」のイメージは、今や「幻影」となって蜃気楼のように揺れていたのです。その「思考」は、未だに「幻想」となって「近代」に「残留」していたのです。
 米国の途轍もなく巨大な「時空間」と途方もなく膨大な「情報量」が、人間存在を相対的に矮小化している。自分が何者で在るのかという「概念」を、心の「地図」に描けない。自分と他者との「関係」を、どう構築するのかという「指針」が持てない。そうした個人的な「情況」が、政治的な「情動」と結び付いて、リアルな力として肥大化している。
 米国の理想主義と現実主義が共存して、その均衡点を模索し続けてきた「空間」が、急速に収縮しているのです。過酷なる「現実」が脆弱なる「理想」を萎えさせて、その訴求力と求心力を衰えさせているのです。「理想」こそが、行動を促して来た。その実現こそが、「現実」を変えて来た。「現実」の裏付けのない「理想」が、一夜の「夢」となって消えようとしているのです。
d0078609_1745385.jpg

[PR]
by artbears | 2016-07-31 17:46 | 連白


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
検索
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧