夢博士の独白



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赤く起立する教会と旋回する光輪、巨大な氷山と夢想の大海、病室から視えた六月の月

 私の「記憶」が正しければ、開け放たれた「窓」は二つであって、そこから観える「空」は一つであって、それは、私の「心」を映し出したものでした。解き放たれた「白鳩」は十二羽であって、それらは、「対岸」に視える真っ赤な「尖塔」の周りを、真っ白な「光輪」となって旋回し始めるのです。やがて、左の「窓」は閉じられても、慈愛に満ちた「春光」は、右の「窓」から優しく射し込んでいたのです。
 私の「記憶」が正しければ、その「光景」は「夢」の中での出来事でした。それ故、それが「夢想」であったとの「判断」も容易に下せたのです。儚く移ろいやすい「記憶」は、巨大な「氷山」の一角となって、「夢」の「大海」を漂流している。その「大海」から突き出た小さな小さな「尖塔」に辛うじて生息している。
 「対岸」は「島影」よりは明瞭に見えたのですが、ジッと目を凝らして視ると、水平線が「波浪」のように上下に揺れていたのです。私は平衡感覚を失ったのだろうか。強い船酔いのような「不安」が増大する。「眼球」の裏側に注射針が撃たれる。楽観的な「夢想」が悲観的な「幻想」へと脱皮しようとしている。この「幻想」が、赤く聳え立つ「尖塔」への「幻視」を欲したに違いない。ところが、その垂直に起立していた「教会」すらも、大きく左右に揺らぎ始めたのです。
 このすっかり騙されてしまう「夢」の現実感は、何らかの「意図」があって現われてくるのだろうか。その「背景」には、どれほどの「意味」が隠されているのだろうか。それは、ポロックの「絵画」のようには「中心」を喪失していない。実は「背景」は見えていない。「意図」と「意味」は、その「中心」を視ることに在るのだろうか。そもそも、このリアルな「感覚」とは何なのだろうか。ポロックが無意識のうちに提起した「絵画」の「問題」は、「夢」の中にも存在していたのです。
 私の「夢」の続きは「対岸」から始まりました。人影の消え失せた「街角」を曲がると、「濃霧」は一層深まって、その「悪霊」のような「冷気」を吸い込んだ「私」は、目の前の茫洋とした「教会」が、あの巨大な「氷山」のように見えることに立ち竦んだのです。とにかく、この「幻想」の「幻視」への展開を止めなくてはいけない。ロバートの繊細で消え入りそうになる、それでいて、温かく誠実な人柄が偲ばれる「歌声」が聴こえて来たのは、まさに、その時の事でした。
 聳え立つ赤い「教会」、その「尖塔」は「濃霧」によって隠されている。その上の「雲海」が「濃霧」を圧し下げている。抑圧的な「教会」、その重厚な「扉」を開けて駆け込むと、地下への「階段」が「視界」に入ったのです。何の迷いもなく、「階段」を駆け下りた「私」は、地下室の木製の「扉」を開きました。そこには、車椅子のロバートが、愛用のピアノを前にして静かに座っていたのです。
 「階段」から転落して失った「自由」、その「制約」を受け入れたからこそ創れた「音楽」、そして、虚飾と詭弁を排したシンプルで力強い「言動」、それらは、彼の一貫した「音楽」の「社会」との関わりを意識した「思考」から導き出されている。それは、「社会」の「不実」に対する告発と変革を希求する、ロックの原初的な「精神」に根差したものでした。だからこそ、彼の「音楽」は中心性を失うことなく、リアリティーを持続している。「自由」の貴重さと困難さと危うさが、その「音楽」から聞えてくる。強靭で柔軟なカンタベリーの「大木」は、豊かな「果実」を実らせたのです。
 私の「左眼」の「手術」が間近に迫っていることが告げられました。車椅子に座っている「私」に気付く、奥の奥に在る「病室」に移動する。後方の「人影」が前方の「扉」を次々に開けて進む。左右の氷のような青白い「手」、その「冷気」が「私」を運ぶ。
 私の「夢想」が正しければ、「病室」には一つの「窓」がありました。そこから観える「夜空」には、美しい「六月の月」が視えたのです。何度も何度も視て、何度も何度も聴いた「記憶」が、蘇って来たのです。若々しいロバートの「歌声」が、リアルな「月夜」に響き渡ったのです。一羽の「白鳩」が舞い戻ったことが告げられたのです。
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by artbears | 2016-02-29 20:38 | 連白


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