夢博士の独白



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イメージの出現と複製、現代の記号性と芸術の無化、ニヒリズムと死の影を帯びた概念

 私の「過去」は一体全体どこへ行ってしまったのだろう。それは、「肉体」のどこかに固定されてはいない。されど、「精神」とは縁がない。それ故、「記憶」は消えて行く。「音楽」のように流れてはいるが、「映画」のように途切れて停まることもある。全体が観えることはないが、一体が視えたという確たる「幻想」を抱くこともある。
 彼女は無造作に片手で「黒髪」をかき上げたのです。それが、「敵意」からなのか、「好意」からなのかは、私の「記憶」には残されていない。それが、「映画」の一場面での出来事だったという「記憶」だけが残されている。彼女が「黒人」であり、涙に溢れた「眼球」が強く何かを訴えていて、それに、私の「感情」が刹那に反応した。恐らく彼女自身も内心では驚いている「表情」、それが、「演技」であることは見え透いていたのです。
 イメージは一体全体どこから生まれて来るのだろう。それは、「記憶」のどこかで流動している。されど、「知覚」の網ではすくえない。それ故、「観察」しても捉えられない。「写真」のようにどこかの「場所」での出来事ではあるが、「絵画」のように何かの「形態」を描いたアリバイでもある。それは、常に「過去」に生きていて、時に「未来」を向いている。
 イメージは何かを指向している。何かを示唆して暗示している。その「何か」とは一体全体どこに在るのだろう。私の「外側」に在る何かが、私の「内側」に在る何かと感応していることは間違いない。五感で捉えた「情報」を「記憶」のデータファイルで参照する。物質と行為によって初めて「出現」するイメージ、それまでは、永遠の「記憶」の中に眠っている。
  「記憶」の深い森に分け入って観よう。未知なる「道」に誘われるようにして、私は「意識」を見失って行ったのです。「風」は、そのことを報せてはくれないが、その「音」は知らせることを怠らなかった。「草木」が靡き、「落葉」が舞い、「小鳥」は寄り添って「体温」を温め合っている。「風」は尚も吹き、何かが壊れつつあることを告げていたのです。イメージの「扉」が開かれるようにして、「森」の奥の奥の「湖面」が光り輝いていたのです。
 何かしらの漠然とした「期待」が無かったと言えば、嘘になる。ところが「期待」は、裏切られることを秘かに欲してもいたのです。歩いて行くしかない、と思った瞬間、遠くに在ったはずの「湖面」は、私の「心」の中で宙づりになっている。今ここに在る、という「実感」、これすらも、「他者」による「体験」のイメージではないのか、単なる「概念」の「複製」ではないのか、という「疑惑」が浮かび上がったのです。
 例え、それが借り物のイメージでもいい、と思った私は、蒼い「森」の中でひっそりと息を潜める「湖面」を覗き込みました。「風」の気配が再び通り過ぎて、「気象」の変化が告げられる。「鏡面」は揺れ瞬いている。あの「映画」の中のいくつかの「光景」が見え隠れしている。それらは、その「真偽」はともかくとして、私の「現在」を形成する「断片」となって映し出されていたのです。
 無数の「画像」が無数の「弾丸」となって、私の「記憶」の中を飛び交っている。弾痕と血痕の「痕跡」が生々しい。その「戦場」は、世界のどこかの「現実」であるとの「仮説」も成り立つ。白人である「男」と黒人である「女」が、命懸けで一人の「赤子」を守ろうとしていたのです。幼い命に「未来」を託そうとしていたのです。
 重い、あまりにも重篤なメッセージに疲弊した私は、無作為にテレビのチャンネルを切り替えました。間髪を入れずに、別の「映像」が現われたのです。その「画面」には、快感原則の「文化」が、大量生産を象徴する「記号」と大量消費を刺激するイメージが氾濫していたのです。デザインとしての「表現」が横溢していたのです。
 軽い、あまりにも軽薄なメッセージに辟易した私は、無造作にテレビの「電源」を落としました。すると、その「画面」には、全てが無になるニヒリズムの「闇」が、あのウォーホルの冷たく鋭利で死の影を帯びた美の「概念」が、いつまでも映っていたのです。
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by artbears | 2015-10-31 18:18 | 連白


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