夢博士の独白



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漂白の虚空を飛ぶ紅色の鳥、記憶の中の鮮烈なる他者、終わり無き真実と残された足跡

 「夢」の中を決然と歩いている。彼は「口笛」を吹く素振りを見せる。彼の「口唇」が青白く震える。私は、「不安」に向かって歩く「私」に出会ったのです。それは、何処に向かっているのかを知らない「世界」のように、根拠の無い自信に満ちた足取りでした。それは、私にとっては未知なる永遠の「他者」でもあったのです。
 彼は「真実」を真剣に探しているようには見えない。「目的」と「方向」が見出せないでいる。そもそも「夢」の中では、ここにいてここにいないという「無名性」だけが存在している。途方に暮れて、独りで自分自身を見詰めることもない。
 「現実」と「夢想」との「境界」がなしくずしの「死」を迎えていたのです。リアリティが喪失している。「真実」が「現実」からすり抜けて、「夢想」や「芝居」のなかに潜り込もうとしている。しかし「夢」の中の「私」は、それを自覚できないでいる。シェイクスピアは言った、我々の「生」は「夢」と同じものからできている。「真実」は「夢」の中にも在るはずなのです。
 私は「視線」を右に向けて、アヴィニョンの「街角」を曲がりました。すると偶然、紅色の「鳥」が漂白の「空」を飛ぶ不思議なポスターが、私の「目」に飛び込んできたのです。季節は「冬」、しかも寒い寒い「夜」でした。しかし「情況」はと言うと、熱い熱い「夏」、しかも「正午」のように想われたのです。それは、「顔」を白く塗りたくったピカソの「娘達」が、バルセロナの「街角」に乗り出してくる「時間」でもありました。街中が「芝居」で溢れ返っている。そのなかに、一つの「真実」が在ると思ったのです。
 私は「視線」を左に移して、退屈な「街角」を何度も曲がりました。すると突然、紅色の「鳥」が漆黒の「穴」から飛び出してきたのです。地下の「暗闇」へと誘惑する「階段」が視えたのです。その黒い「穴」からは、悲惨で凍り付くような「風」が吹き上げてくる。悲痛で身悶えするような「音」が込み上げてくる。その「場所」は、遥か「彼方」の懐かしさの「予感」に充ちていました。その「風音」は、スティーブのストレート・ホーンの「穴」から聞こえてくる「音楽」に違いなかったのです。
 白熱灯が終わり無き「夜」を照らし出し、木造の階段式になった「劇場」の中央には、虚無を見据える円形の「空間」が現れたのです。彼の「音楽」との格闘はすでに始まっていました。リフが何度も繰り返される。無限の可能性のなかから、一つの「音」が慎重に選ばれては絶たれる。抑制しては解放される。沈黙と静寂の「空間」に戻される。透徹した「意志」の持続性と困難性が問われていたのです。究極の「表現」は在り得ない。それは、永遠の「彼方」でしか起り得ない。そのことを証明する「行為」が続いたのです。終わり無き「真実」が演じられたのです。
 「記憶」は、どのような「幻影」をも受け入れる。そして「幻影」は、時として「現実」となる。それは、京都での出来事でした。セシルのライブから二年、アヴィニョンのソロから三年の「時間」を経てのことでした。
 私は「視線」を左に向けて、四条河原町の「街角」を曲がりました。地下への暗い「階段」が現れる。すると突然、虚無を直視するかの「修行僧」が、ソプラノ・サックスを吹く朱色のチラシが、私の「目」に飛び込んできたのです。それは、鮮烈なる永遠の「他者」としてのスティーブに他ならなかったのです。
 京都の「外気」は研ぎ澄まされて美しい。私の「内面」までもが透明に凍り付くようだ。そして、その「夜」の「音楽」も、「他者」の終わり無き道程に残された「足跡」として、私の「記憶」の深奥で氷結している。
 それにしても、何という「冷気」なのだろうと、隣に寄り添うもう一人の「私」は、コートの襟を立てて呟いたのです。私達の「影」が足元の「闇」に溶け込むのが視えました。フリージャズの混迷の「闇」が拡がっていたのです。それは、ジャズの本質的な「矛盾」を照らし出す「影」でもあったのです。
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by artbears | 2015-07-30 20:34


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