夢博士の独白



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結末又は発端としての記憶、北欧の青空と精神の教会、御影石に封印された白い山野草

 セーヌは流れる。美しい足し算の永遠の反復のように流れる。「記憶」の川が「結末」から遡るようにして流れていたのです。「発端」には、セーヌ右岸の小高い丘には、カフェ・モンマルトルの「記憶」が在りました。もう一枚の「枯葉」が流れてきたのです。
 中古レコード盤の曖昧な灰色をした「眩暈」が回転している。それは、新宿での出来事でした。魔法をかけられた生き物のように動く「手」によって、セシルの「音楽」は無情にも断ち切られたのです。レコード盤の「裏面」が反転される。カフェ・モンマルトルがデンマークに存在したという「事実」が語られる。私の「記憶」も反覆されて、新しい「過去」に上書きがなされたのです。
 ストックホルムの地下道では、アルバートのサクソフォンがせせり泣く。時として「咆哮」する。その「音色」自体が悲しみを抱いている。その「旋律」自体が苦しみに耐えている。北欧の「青空」は鉛色に曇り、重い「苦悩」が垂れ込めていたのです。
 一方、セシルのユニットは、カフェ・モンマルトルでのライブに臨もうとしていました。その「音源」の一週間前に、二人の出会いが存在したという「物語」が現実味を帯びてきたのです。今となっては誰一人として確かめられない「物語」、それが「真実」であることに向かって、「記憶」が逆流を始めたのです。
 濃淡も様々な灰色の「雲海」が流動を速めていました。その「雲海」から、銀色の糸となって、銀色の針となって、光を纏った「雨」が落ちてくるのが視えたのです。それらが次々に「記憶」の水溜まりに突き刺さる。「記憶」の波紋は「真円」を描いて拡がり、やがて別の波紋と結ばれて、一つとして「原形」を留めるものは無かったのです。
 待ち合わせの「場所」であるカフェでは、黒いワンピースを着た「少女」が、淡い生成り色の「日傘」を差していました。その「日傘」に施された上品でエレガントな「刺繍」が紡ぎ出したのは、マネの「黒衣」とモネの「日傘」の結合したイメージだったのです。安堵と焦燥、興奮と冷静、それらの相反する「感情」を分け隔てるようにして、カフェの「空間」と「私」の間には、分厚いガラスの「壁」が立ち塞がっていたのです。
 私は、ガラスに映る「少女」の面影を追いながら、右方向に湾曲して下る「階段」を降りることにしました。多くの男女が「階段」の左側に並ぶ。彼等の「会話」と「視線」に注意を払う。一刻を争うことではないが、「記憶」の「原形」が失われてはいけない。私は、直感的にカフェへの「入口」の見当を付けていたのです。
 薄暗がりは息を潜めて、エレベーターの「扉」を開いて、私を待っていました。その「暗闇」に入るや否や、セシルのピアノの硬質で彫刻的な「音塊」が、圧倒的な「音質」の凝縮力と圧縮力をもって、その「空間」を封印したのです。
 エレベーターは最上階を目指して、猛スピードで上昇しました。「音」と「音」との緊張関係が高まる。「音間」に存在する不純物が削り落とされる。ある種の真空状態が創造される。セシルの静謐で高貴なる「音楽」が、その「空間」を支配したのです。
 薄明かりは息を弾ませて、エレベーターの「扉」を閉じて、私を招き入れました。その「暗闇」を出るや否や、深い縦長の構造の「教会」が、拝廊のような「空間」が現れたのです。「白雲」の高さにまで達する「天井」には、数学の計算式のように美しく端正な「枠組」が、ステンドグラスの代わりの「役割」を果たしていたのです。
 漆黒の御影石が至るところに転がっていました。その「鏡面」には「青空」に浮かぶ「白雲」が映され、その「内面」には純白の可憐な「山野草」が閉じ込められていたのです。清明にして厳格なる「精神」が視覚化されている。創造の「世界」が結晶化されている。私は、そのリリシズムに触れることにより、そのストイシズムを視ることにより、私自身の「精神」を変えることの可能性を感じ取ったのです。
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by artbears | 2015-06-30 12:54 | 連白


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
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