夢博士の独白



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目の奥に現れた戦闘機と潜水艦、エメラルド色に光る海、水没した螺旋状の階段の秘密

 その時、アパルトマンの「上空」を金属の悲鳴のような「音」が通過したのです。見上げると、戦闘機の銀色の「胴体」が目に飛び込んだ。不気味なシャークの「腹部」が目の奥に現れた。それからキーンという「音」が垂直に落ちて来たのです。蒼い「公園」の針葉樹の「木立」は、その「音」に向かっていっせいに背伸びをする。灰色の下地の上に、紫色の刷毛の一筆が走る。急変の「曇天」を背景にして、いくつもの教会の「尖塔」が乱立して視えたのです。無音の「鐘」が左右に首を振ったのです。
 「窓」は開け放たれていました。「人影」がアパルトマンの住人となったのです。古びた煉瓦の「外壁」の上に置かれた「手」が見える。その動かない「手」を、私はしばらく「外壁」に触れたままにしたのです。そのザラザラした「感触」が、私を問い詰めたのです。とにかく終わらせたかったという「感情」が浮かんでは消える。私は、あの忌まわしい「部屋」から抜け出たことを「実感」したのです。
 「窓」は開け放たれていました。サクソフォンの「音」が流れて来たのです。ジョンの乾いた「音」でした。肉塊のトンネル、艶々した紅い「内壁」が、金属の冷たい「管」と繋がっている。黒人の「苦悩」が解き放たれる。肉体から遊離した純粋な「苦悩」が響く。再現性のある「音符」の組み合わせが、私の過去の「感情」を呼び覚ましたのです。その振動する「空気」は、私を何度も取り囲んで来たものでした。ベッドの上の日溜まりが懐かしく思われました。黒いレコード盤がクルクルと永遠に回っている。それが、目の奥に現れたのです。
 「木陰」が「木立」と対立した概念であるとの「認識」はなかったのですが、私は何かに急かされるようにして「森林」に分け入っていました。そこは、「公園」と「認識」されていた場所でした。知恵者のカラスの「眼光」が、私の背後で「翼」を拡げる。長くもなく短くもない「距離」を歩きながら、それは、「光線」と「精神」が決めることだと思ったのです。
 蒼い服だったのか、青い服だったのか、そもそも「少女」は脱衣させられていたのかもしれない。麻酔をかけられた白い象牙の「肌」が浮かんでは消える。ベンチの上には、柔らかくてしなやかな黒革の「手袋」が忘れられていました。確かに「少女」の後の証言のように、その「手袋」にはボタンが付いていなかったのです。
 私は立ち止まり、大きく息をして、再び「落葉」を踏み付けながら歩き始めたのです。一歩毎に「雨」の匂いが弾ける。「草叢」に身を隠した動物の臭いと混ざる。想定外の「獣道」との出会いは、私を左前方に誘導するかのように曲がっている。「獣道」の薄暗がりの先には、得体の知れない動物の「気配」を常に感じる。私は歩き続けたのです。やがて、前方を塞いでいた鬱蒼とした「木立」が開かれると、その向こうからは、「海」の塩気を含んだ匂いが漂って来たのです。
 私は赤い煉瓦を敷き詰めた「坂道」に出ました。その「坂道」を右手に下った先には、エメラルド色に光る「海」が広がっていたのです。その「場所」は不思議なことに、あのアパルトマンの裏側に位置していたようでした。無数の煉瓦が剥がされていることから、「坂道」が工事中であることが容易に判断できたのです。
 進入禁止のバリケードに囲まれた巨大な「穴」から覗き込むと、そこには、途方もない量の「海水」が湛えられていて、あの「部屋」へと繋がる螺旋状の「階段」が水没していたのです。そして、「階段」を昇るように回遊する不気味なシャークの「背部」が視えたのです。灰色の潜水艦が浮上する。それが、目の奥に現れたのです。
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by artbears | 2014-06-15 16:43 | 連白


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