夢博士の独白



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木陰とベンチに座る少女の手袋、木立と階段を上がる老女の蝋燭、人影と不安の関係性

 飛行機がゆっくりと離陸する。その「映像」が着陸する「映像」と瞬間的に置き換わる。それが、トランプを切る素早い手付きのように何回か繰り返される。裏表が逆になる。私はうんざりする。私と飛行機はすでに「雲海」の上に在ったようでした。
 コンクリートで造った土管のように見える円筒形の「機内」が揺れる。テレビモニターに映し出された「犯人」の口元の皮肉な薄笑いも揺れる。私は、まるで万華鏡の「内部」に迷い込んだような居心地の悪さを感じたのです。小窓から「外部」を一瞥すると、緑色の「木立」が後方に吹き飛んでいく。着陸の「恐怖」が、私を強張らせたのです。
 リュクサンブール公園というフランス語の心地良い「言葉」が聞こえて来ました。そこが魅力的な公園であったという「記憶」は少しも無かったのですが、その軽やかな「言葉」の響きだけが残っているのです。「太陽」は目的もなく漂う雲を追い払って、その前を、一つの孤独な「白雲」が悠々と通り過ぎていく。私の「時間」も刻々と滑るように経っていく。その「光景」が、まるで目の「表面」を触っているようでした。
 「視界」は再び緑色に覆われました。「木陰」では木漏れ陽がキラキラと舞って、ベンチに座る「少女」は静かに「手袋」のボタンを嵌めていたのです。
 パリのアパルトマンは、小窓から視えた「木立」よりも、むしろ公園の「木陰」と密通した「関係」にあったような雰囲気が感じられました。とにかく窓からの「陽光」が眩しい。緑色の「光線」が手の平に葉脈を焼き付ける。その時、通りすがりの「強風」に、窓枠がガタガタと軋む音を発てたのです。振り向くと、カーテンが無言で佇む「人影」に見えたのです。音を使った巧妙な手口で、「不安」はアパルトマンに侵入したのです。
 何としても、この「不安」から身を引き離さなければいけない。ベッドに腰掛けていた私は、足先に体重を掛けて立ち上がり、何歩か足を運びました。予想した通りに、床板はギシギシと軋む音を発てたのです。その「音」には密告の「言葉」の持つ、衝撃性と一貫性がありました。私は思わず「耳」を塞いだのです。ところが逆に、その奇妙な「耳」のブヨブヨした「感触」に度肝を抜かされたのです。
 何を置いても、私は「鍵」を掛けるべきだと思ったようでした。今から振り返ると、そのように行動していたのです。でも、その判断の「根拠」なるものは、永遠の「謎」に包まれているのです。その「矛盾」にこそ「根拠」があり、夢の「真実」が隠されているのかもしれなかったのです。
 木製の重厚な「扉」と手垢の付いた真鍮製の古びたノブが「視界」に残されていました。しかし「鍵穴」には、ステンレス製の真新しい「鍵」が内側から施錠されていたのです。その後、背後から「人影」が迫って来るのを感じ、その媚薬のような「気配」に、私は陶然としたのです。
 耳を澄ませると、階段をゆっくりと上がる「足音」が聞こえて来ました。巻貝の「内部」を想わせる螺旋状の階段には、黒い頭巾を被った「老女」の姿がくっきりと浮かび上がったのです。手に持った蝋燭の「炎」が怪しげに揺れたのです。
 私は、「人影」を真正面から見据えることを決断しました。振り向くと、窓が開け放たれて、カーテンが風に靡いていたのです。窓際に在る「脚」が異常に長いベッドには、洗い立ての木綿のシーツが敷かれていて、そこには日溜りの「痕跡」が残っていたのです。
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by artbears | 2014-05-27 20:46 | 連白


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
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