夢博士の独白



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窓又は暗室への入口、再現を拒否した鏡、三幅対の移動可能な空間と裸体となった人間

それらの「部屋」に入るのには三つの選択肢があると、しかしながら結局は一つであるというのが、私が下した結論だったのです。それは、それらの「絵画」は三幅対の形式を採用しているのですが、中央に位置した「絵画」から侵入して、左右どちらの「空間」への移動も可能だと判断したからでした。つまり、それらの「部屋」は、2室の対比的構造でも4室の時間的構造でもなかったのです。何れにしても、この「絵画」が閉ざされた「密室」での出来事なのは間違いなかったのです。しかしながら難儀なことには、どの部屋への「入口」にも、「視線」の侵入を撥ねつける冷たく硬い「ガラス」が、その黄金色に輝くクラシカルな「額縁」に嵌め込まれていたのです。「運命」は最初から決まっていた。私は意志を固めて、中央の「絵画」から正面突破を試みました。「ガラス」は、私を切り開く。そのことを期待していた私は、「絵画」に身を委ねて、私自身を自虐的に開いて行く。噴き出した赤い「血液」は、傷口の周辺で凝固して、やがて白い「錆び」のように変色して付着する。それは、私の「知覚」のもう一つの「皮膚」となった。表層のレイヤーとしての「皮膚」は、下層の「肉」からも「骨」からも離脱して、「絵画」の物質的なリアリティーに直接に接触することを強いられたのです。私が視たのは、人間の動物的な「叫び」でした。人間の本能的な「情動」が、「脳」への最短距離を一直線に放たれた「矢」となって、私の全身を貫いたのです。私が出会ったのは、人間の本質的な「身体」でした。感覚器官の集合体としての「身体」でした。それは、奇妙で呪われたイメージの「合成」から出来ているのですが、嘘偽りの無い真実の「形態」でもあったのです。そして、そのグロテスクで恐怖に打ち震える「身体」こそが、裸体となった人間の「本質」のように視えたのです。そのおぞましい「絵画」は、人間をして、「精神」を「肉体」から切り離し、「骨格」からも分離された「肉塊」として描いていたのです。その「絵画」は、ベーコンの計算され尽した衝撃的で猟奇的な「事件」でもあったのです。再び、何かを威嚇するような「叫び」が「空間」に反響しました。無意識の「海」に溺れかかった私は、さらに、その深層に在る「密室」に踏み入れたことに気付いたのです。「ガラス」が今度は、私を閉じ込めた。向こう側の「世界」では、人々がスローモーションで歩いているのが視える。全ては、ごく些細な出来事においても、それは「存在」で充溢している。こちら側の「世界」が見えないのだろうか、と思う。しかし、何かが「移動」するのを視ることは、決して不愉快な出来事ではない。それは、「存在」が不定立であり、二つの対比的構造にある「存在」が、お互いの不気味さを打ち消し合っているからだ。それは、時間的構造に在る「生」の曖昧さにあるのかもしれない。私は、こうした取り留めの無い「思考」を中断して、クルリと半回転したのです。すると、そこには、漆黒の「暗室」への入口としての「窓」が描かれていました。それは、一点の不明瞭さも無い、絶対的な枠組みである「死」への入口のように視えたのです。「死」は不意に「暗室」から出て人々を襲い、何食わぬ顔で「暗室」へと戻るのです。なんと力強く暴力的で身勝手なのだろう。生き延びようとする微塵の弱さも無い。このように、それらの「窓」は通路となって、三幅対の「部屋」は裏側の「世界」で繋がっているという完結した「構造」を暗示していたのです。私は「ガラス」を後ろにして寄り掛かり、「瞼」を固く閉じました。そして静かに、私自身の人間に対するイメージが現れて来るのを待ったのです。しかし、それらは全て、ベーコンの創造したイメージの引用と借用に過ぎず、不可視であるはずのものを視てしまったという「証拠」しか映らなかったのです。私は再び、「瞼」を開くことにしました。すると、驚愕の「光景」が、私の「視線」を虜にして、凍て付いた私が視たのは、恐ろしく哀れな「陶酔」に浸っている私自身だったのです。それは、思考による「観念」では捉えることの出来ない、あまりにも感覚的にはみ出した、そして、その過剰さが故に混乱に陥った、例えるならば、「移動」前の色鮮やかな「蛇」のような、そうした「不条理性」そのものだったのです。その不条理性の「肉塊」の傍らには、一枚の「鏡」が立て掛けて在りました。そこには、より激しく歪められて苦悩に耐える「自画像」が写っていたのです。しかし、その「鏡」の役割は、「現象」を正確に再現することではなく、深層に眠る人間の多義的な「現実」の可能性を写すことのように思われたのです。
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by artbears | 2013-03-29 19:27 | 絵画


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
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