夢博士の独白



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輝かしい小さな苦悩、雪の世界と音の世界の恐怖、存在を超える何か又は越えるべき壁

窓から観える「雪景色」は、遠くから眺めている限りは善良であるとしても、身近に接するものとなった途端に、その「野獣」のような牙を剥き出しにすることは、先刻承知のはずだったのです。そして、その情け容赦のない「証人」のように深々と降り積もる「雪」は、決してシンシンと「音」を発てることなく、極めて用意周到に進軍する「軍隊」のようにも視えたのです。私は、この無防備な「都市」に攻め込もうとする「雪」に、恐怖の感情を懐きました。なぜならば、遥か遠い「雪山」の頂から、あの不気味な野性の「植物」のように「都市」の崩壊を窺い、今度こそは力ずくで、完膚無き「制圧」を企んでいないとは、決して言い切ることが出来なかったからなのです。「雪」は坂道を覆い隠し、車両を引き摺り下ろし、人々の足を折りました。そして、あの虚勢され、飼いならされた無害な「植物」を蔑み、自らの身の「潔白」を証明しようとしていたのです。私は、「都市」の黒い巨大な「穴」に隠れていなければならない。そこには、黒い俊敏な「水」がひとりでに動いていて、時折吹き抜ける白い乱暴な「風」は、水面とスレスレのところで、この都市の「澱」のように漂う「霧」を追いやろうとしていたのです。「雪」が激しく降って、白い巨大な植物の「葉」が幾重にも敷かれていくようにも視えたのです。私は、この「部屋」から決して脱獄を試みてはならないと、強く心に誓いました。すると、その「決意」の雪解けを促すようにして、私の「内部」に流れ込んだのが、あの白痴のようなサクソフォンの乾いた甲高い「声」だったのです。「部屋」は既に「音」に占拠されていました。ニューヨークの「青空」は一瞬にして燃え上がり、摩天楼は黄色い巨大な「炎」の草原に変じたのです。薄暗い屋根裏部屋は全て強火で焼かれる。消し炭のような眉毛を持ったユダヤ人は、MASADAの「記憶」から逃れようと嘆き、ハアハアと喘ぎ、額から頬へと流れ落ちる「汗」は沸騰したのです。輝かしい小さな「苦悩」が、それは遥か遠くの想像の世界の出来事なのですが、それが、私の「内部」にイメージの「牢獄」を創ったのです。それは、「物」として存在しない、余計なものはいっさい保持しない、ただの空気の「振動」に過ぎないのですが、私を観念のプリズンに閉じ込めたのです。しかし、このプリズンとは、ある一定の「時間」が経てば、その「施錠」が解かれる約束事が交わされていました。やがて、熱く狭い「鉄檻」は内側から開かれたのです。緊張の「牢獄」から釈放された私が、次に選んだのは、ピアノソナタ第29番の第3楽章でした。「光」がCDの中心に向かって、まるで「死」に向かって滑り落ちていく「過程」において、胸かきむしる哀しく美しい「旋律」は、その背後にある「苦悩」を浮き彫りにしていったのです。それは、遠い「過去」の出来事でありながら、まさに「現在」に甦ろうとしている「苦悩」であり、その「永遠性」は繰り返して再現されるものでした。その硬質で乾燥した「純粋性」に触れた私は、私がだんだんと曖昧な「存在」であるように感じたのです。事実、この数日間で、一度は減量を果した私の「肉体」には、再びブヨブヨした「脂肪」が付着して、その剥き出しの「存在」である私が、とても醜悪な「物」に感じられたのです。それに比べて、この「旋律」の何と高貴で優美で軽やかで在ることか、その鍵盤から弾け出される「音」の背後には、重い「肉体」の軋みはなく、この世の「存在」を超えた「精神」の世界に通じる何かが在ると感じたのです。しかし、あの世との「境界」には、越えるべき巨大な「壁」が立ち塞がっていることは間違いありません。私は、この「存在」の曖昧さに耐えられなくなったのです。そして、「聴覚」の世界から「視覚」の世界への脱走を思い付いた私は、情報源をCDからDVDに切り換えたのです。なぜならば、「映像」は、より直接に私の「内部」に流れ込み、あの観念のプリズンに閉じ込められる「恐怖」から自由にしてくれるからです。シーズンⅡの第6巻では、10人の脱獄者の内の2人が、越えるべき「壁」の内側で自由を断念するという「運命」を受け入れたのです。しかし、物理的な「壁」を越えた8人には、行く手を阻む社会的な「壁」が次々と現れて来ました。「自由」は蜃気楼のように先に現れ、「死」が可能性として後に残されたのです。私は目を固く閉じました。すると、私の「内部」から、あるイメージが亡霊のように立ち上がって来たのです。それは、木の葉が舞い、吹き荒れる「寒風」の中、ニーチェの馬の「存在」に耐える姿でした。もちろん周りには、超えるべき「壁」も「柵」すらも無かったのです。
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by artbears | 2013-01-26 11:51 | 映像


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
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