夢博士の独白



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鏡面に映ったバレリーナ又は三羽の白鳥、湖面に映る幻としての記憶又は枯れ逝く鬼蓮

三方が鏡面構造になっている「箱」を、上方から覗き込んでいる私に気付いたのは、ちょうど「意識」が深い霧の立ち込める「夢」の中を彷徨っていたときのことでした。「箱」の中央には、回転するチュチュが白い菊の花のように視えて、キュキュと鳴るトウシューズの軋む音が「白鳥」の鳴き声のように聴こえたのです。静寂の中で、白い「独楽」が自立回転を続けていたのです。そして、バレリーナが回転から静止のポジションを取る度に、透明で無臭の「汗」が周りに飛び散って、三つの「鏡面」には水分を含んだ「皮膜」が形成されたのです。その垂直に立つ「水面」には、正面と左右が別々の表情を持つ三羽の「白鳥」が映っていました。私は、その「白鳥」の、どの角度から観ても清楚で凛とした「容姿」に心奪われたのです。静寂の中で、孤独な「白鳥」の優美な「舞」が演じられたのです。ところが、私が目線を下げるに従って、新たに気付いたことは、私はコンクリートで固めた「湖岸」から迫り出すように伏せて、この眼下に繰り広げられる「光景」を観察していたということでした。胸元の真下には、下水管の大きな「口」が視えて、黒く濁った「汚水」がドロドロと流れ始めていたのです。その「汚水」が、バレリーナの白い「足首」にヒタヒタと迫り来ることを「予感」した私は、空間を隔離して立つ「鏡面」を三方に押し倒すことを思い付きました。「壁」は倒れて、その代償として鏡像空間は崩壊して、「汚水」は黒い不吉な「影」となって、まるで悪魔の手が「湖面」を覆い尽すようにして拡がったのです。この世の春とばかりに繁茂していた「鬼蓮」は、突然の「水質」の変化にもがき苦しみ、血反吐を吐きながら枯れて逝ったのです。何という「悲劇」、何という「哀歌」が演じられることになったのでしょうか。私は、未来に見るであろう「記憶」を幻視してしまったのです。そして、三羽の「白鳥」は、「湖面」のどこを探しても見当たらず、代わりに目撃されたのは、三羽の「白鷺」の餌を漁るみすぼらしい姿だったのです。私の「意識」は、あの美しい「白鳥」を探し求めて、再び深い霧の立ち込める「夢」の中を彷徨うことになったのです。暗中模索の中で、どこまでも延びる「線路」だけを頼りにして、私はトボトボと歩き続けました。それでも、その気の遠くなるような長い時間の中で、霧間から顔を覗かせる秋の「紅葉」の刻々と変貌する様子は、私の目を楽しませてくれたのです。すると、五里霧中の中で、古びたコンクリート製のプラットホームが徐々に姿を浮かび上がらせて来たのです。そして、灰色のモウモウとした「煙」を吐き出しながら停車する蒸気機関車が、まさに発車しようとしていたのです。ベルがけたたましく鳴り響き、私は間一髪で、自らの「命」を拾うことが出来ました。まさに「強運」の成せる業でした。プラットホームに駆け上がった私は、愛用のスマホの着信音に気付きました。しかし、ポケットから取り出したスマホは見知らぬゲーム機に変わっていて、どの「画面」にも「蛙」のアイコンが並んでいたのです。仕方なく「カエル、カエル」というゲームを選ぶと、周辺の稲刈りを終えた「田圃」から、一斉に蛙の「イタイ、イタイ」という合唱が始まったのです。雲散霧消の中で、過去に聞いた「記憶」がはっきりと甦ったのです。私は、後先を考えずに、動き始めた蒸気機関車に飛び乗ることを決めました。兎にも角にも、帰ることを優先すべき「事態」が起こったと判断したのです。乗客を乗せた「車両」はプラットホームを離れ、「車窓」からは蛙達が顔を覗かせ、あの三羽の「白鷺」の飛び立つ姿が視えました。次に、貨物を乗せた黒いコンテナが目の前を通過しようとしました。そして、そのコンテナのステップ台には、碧眼のなびく金髪が美しい、白の上下のスーツを着た「英国人」が、手摺を片手で掴んで立っていたのです。私は、彼の指示に従って、その黒い「箱」に飛び乗ることに成功しました。そして、彼はと言うと、天翔ける「英国人」となって、あの三羽の「白鷺」を追い駆けるようにして消え去ったのです。残されたのは私と、そして耐えられないほどの「沈黙」でした。ところが、それだけでは無かったのです。その「箱」の奥の暗がりからは、あの傷付いた「白鳥」の静かに横たわる姿が、まるで蜃気楼のような哀愁と郷愁を帯びて立ち上がって来たのです。彼女の穢れなき純白の「両翼」が覆い隠していたものは、真っ赤に腫れ上がった「足首」の痛々しさでした。私は、この「箱」の鏡面構造を「心」に想い描きました。そこには、真っ青に晴れ上がった「碧天」の下、黄金色に輝く稲穂が映っていたのです。
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by artbears | 2012-10-30 18:31 | 夢白


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
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