夢博士の独白



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17個の電球と7個の蝉の脱殻、DVDの重量と閉じ込められた質量としての24時間

下りのエスカレーターの「左側」に立つ人を視て、ここが「大阪」でないことに「意識」が集中してしまった私は、その代償として、乗り継ぎの地下鉄の「終電」に飛び乗ることが出来なかった、との言い訳を思い付いてメールを送ったのです。それは、乗り遅れた電車がトンネルの「暗闇」に呑み込まれるように姿を消して行くまでの、ほんの1~2分の出来事だったはずなのです。ところが、電光掲示板には未だに「終電」の時刻が表示されたままで、その「時間」は、私のiPhoneの送信履歴に残る「時間」を未だに過ぎていなかったのです。「混乱」を抱え込んでしまった私は、私が「夢」の中で在ることを知りながらも、思わず、両手で「頭」を鷲掴みにしてシェイクしたのです。すると、「頭」の中では「時間」の順列の組み換えが行なわれ、コロンという「音」とともに最初に転がり落ちて来た「物体」は、1個のクマゼミの幼虫の「脱殻」だったのです。それは、「終電」に間に合わなかった私が、小雨が大降りにならないことを願いながら小走りで「定宿」に辿り着き、何気なく見た「桜」の幹にしがみ付いていたクマゼミの「脱殻」に違いなかったのです。確か、あれは午前1時の出来事でした。「記憶」の再生は巻き戻しが成されて、黒く染め上がったクマゼミの「躯体」はしだいに白っぽく変化して、最後には金色の「微毛」が初々しく輝き始め、透き通った「翅」は誕生の奇跡のような「瞬間」に打ち震えていたのです。再び「頭」はシェイクされ、次に転がり落ちて来た「物体」は、1個のクマゼミの成虫の「亡骸」だったのです。確か、あれは午前8時の出来事でした。高原行きのバスの「始発」に乗り遅れまいとしていた私は、思わず、バスの乗降ステップの手前に落ちていたクマゼミの「亡骸」を踏み潰しそうになったのです。その「瞬間」、その「亡骸」には必ず一対の「脱殻」が存在し、「時間」の一方向への不可逆的な流れは、その「痕跡」としての「生命」の絶え間ない誕生と死滅の「反復」を、まるでミニマルミュージックのように奏でていることを想ったのです。そこでは、「個体」としての巻き戻しや早送りは許されず、「全体」としての再生だけが繰り返されていることが視えたのです。その「瞬間」、クマゼミの残された「時間」に対する悲鳴のような大合唱が、私の「耳」に大洪水となって流れ込んで来たのです。それらの「映像」や「音響」は、どうやら私の「記憶」の領域に一時的に保管されていたように思われました。そして、2時から7時までの空白の5時間の行方を探し求めようとした私は、「記憶」の領域からもっと深くもっと暗い、「心」の領域を覗き込まなければならなかったのです。心の「暗闇」から辛うじて視えて来たのは、5個のクマゼミの連結した「脱殻」だったのです。5個の「脱殻」は各々が繋がっていて、等間隔で切り開かれた躯体の「割目」が痛々しいのです。その空っぽの「脱殻」は、空白と表現するよりは、「虚無」の支配する暗黒の「時間」のように思われました。私は、この失われた5時間の、私に与えられた24時間における「意味」を考えながら、ぼんやりとレストランの軒に吊り下げられた「照明」を眺めていたのです。確か、あれは午後23時の出来事でした。「照明」は合計で17個の「電球」から構成されていて、それらは、「死」の暗闇の圧倒的な侵食から「生」の領域を守るかのように光り輝いていたのです。それらが、私の昨日の17時間に照応したものと気付いた私は、その中にあって最も光り輝く「電球」に視入ることになりました。確か、あれは午後1時の出来事でした。「24」の続編がどうしても観たくなった私は、タクシーに飛び乗って「定宿」を後にして、行きには、衰弱した大型犬を抱えて途方に暮れる友人を見過ごし、帰りには、喘息を患った老婆に救いの手を差し伸べることもなく、一目散にDVDをセットしたのです。何と薄情なるかなと我が身を省みながらも、何と言っても「上質」のエンターテイメントは、この深刻なる「現実」から目を背けて気を晴らすには最適であることは間違いなかったのです。それにしても、24時間を物理的には、このDVD12巻の「重量」に置き換えられることは、ちょっとした驚きの「感覚」でもありました。そして、「映像」や「音響」に物理的な「質量」が存在するのかとは別の問題として、芸術的価値としての絶対的な「質量」の差異が存在することは信じ続けたかったのです。私達は「24」を観ることで、リアルタイムの24時間を消費しました。しかし、あの「心」の暗闇に見え隠れする脱殻としての「時間」は、DVDの何処にも映像化されていなかったのです。
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by artbears | 2012-07-31 18:36 | 映像


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
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