夢博士の独白



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蝉の合唱と突然の静寂、地図を埋める失われた音楽、海に浮ぶ島へと変化する耳の構造

蝉達の死に物狂いの「合唱」は、延々と続くのではないかと思われたのです。それは、いつもの「夏」の出来事として、まるでフリージャズの集団即興演奏のようにも聴こえて、そのヒステリックなサウンドは、山々の「稜線」と私達の「鼓膜」を波状的に震動させていたのです。そして私達が、あの「雑念」を払拭したかのようなピカピカのアクリル製の飼育ケースの中に居ることに気付いたのは、その指揮者が存在しないはずの「合唱」が突然に途絶えた「瞬間」においてだったのです。その飼育ケースは、上部の黒い「蓋」と思われる部分を除いて、全ての「壁」がクリスタルなプラスチックスで出来ていました。それは、「無音」のサイレンスが詰め込まれた「小箱」であり、その透き通るような「静寂」のサウンドは、直視できないほどに眩しい「光沢」を放っていたのです。それは、彼等の「天界」からのハーモニーが、私達を「俗界」からスルッと引き離した「瞬間」でもあったのです。そして、追い掛けても追い着けない「時間」の抜け殻としての「小箱」の中で、私達は過ぎ去った「過去」の喪失感に想いを寄せ、消え去った「音楽」の透明感に想いを馳せていたのです。あの暑い「季節」も、あの熱い「音楽」も詰まっている「空間」の中で、ひっそりと厳粛に、ただ静かに「呼吸」を続けて居たい気持ちだったのです。暫くして「状況」に変化が訪れて来たのは、私達が、なぜか無性に、蝉達のあの喧騒の「合唱」が懐かしく思えたからでした。もっと、先に横たわる「時間」を見詰めたかったのです。私達は、透明な「壁」に「耳」を強く押し付けて、飼育ケースの「外界」から聴こえる「音楽」に耳を傾けることにしたのです。すると、様々な珠玉の「名曲」と語り継がれて来た「音楽」が、透明な「壁」をフィルターとして通り抜けて、私の「脳内」のレコード分類棚の「空白」のスペースに次々と納まって行くではありませんか。それは、まるで私の「音楽史」というジグソーパズルの失われたピースが埋められて行くかのようでした。私は、この「音楽史」を一枚の視覚的な「地図」として視たいという「欲望」に襲われたのです。飼育ケースは、そうした私の「欲望」を理解してか、ゆっくりと「上昇」を開始したのです。クラクラとする目眩に耐えながら「下界」を見下すと、そこには、投げ掛けられた謎解きのような「光景」が視えて来ました。二つの対照的な「状況」が目撃されたのです。この殺人的な「猛暑」の中にあって、一方の「水場」においては、二羽の仲睦ましいアヒルが、大好きな「庭池」の水量の減少を心配そうに見詰めていました。もう一方の「牧場」においては、一頭の孤独を愛するヤギが、大嫌いな「雨雲」の水量の増大を心配そうに見詰めていたのです。同時に二つの異なった「願望」が存在していたのです。やがて、飼育ケースは、より高く全体を見渡せる「雲界」に達したようでした。すると「庭池」には、白い小さな二点となったアヒルに加えて、口をパクパクさせて「酸素」を求める数匹のコイの「存在」が認められたのです。そして「雨雲」はと言うと、雨を降らすことなく通り過ぎたようで、白い小さな一点となったヤギの「生死」の判断も下せなかったのです。一つの「願望」の実現すら危ぶまれる「状況」が目撃されたのです。飼育ケースは更なる「上昇」を続けました。足元の透明な「底」から見下すと、黒く濁って重苦しい「雨雲」が、まるで雨後の濁流のように流れ、眼下に展開するはずの「光景」を消し去っていたのです。私は致し方なく、心の中で、私の音楽との関わりの「歴史」と「地図」を想い描くことにしました。「脳内」の暗闇から浮び上がって来たのは、巨大な「耳」のような構造をした「渓谷」と、それに沿って螺旋を描いて通る「参道」でした。「参道」は道幅が狭く、対向車との交差には困難を極める一方通行のように視えました。数頭のヤギが、険しい坂道を修行者のようにして歩み、彼等の時々見下す「視線」の先には、「渓流」に逆らいながらも上流を目指すコイの「存在」が認められたのです。何れにしても、「参道」も「渓流」も「頂上」に導かれていることが、この巨大な「耳」の構造であることが視えたのです。私の「音楽史」は、限られた時系列の中で偶然に形成されたものに過ぎなかったのです。飼育ケースは更なる「上昇」を続けました。そして、この曖昧模糊とした「雨雲」が突き抜けられた時、私が向き合うことになったのは、限りなく透明で純粋な「視界」だったのです。それは、閉じられた「耳」の構造ではなく、例えるならば海洋に浮ぶ「島」のような、時空間を超越した開かれた構造のようでした。
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by artbears | 2011-08-31 18:49 | 音楽


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
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