夢博士の独白



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被災した空港と海港、幻影のグラスと実影のカモメ、増水した河川の対岸に咲いた藤の花

飛行機に乗るという苦渋の決断を下した私の「眼球」には、きっと溢れ出た「涙」の一部が残っていたのでしょう。そのためもあって、この飛行機の小さな「窓」から見えるはずだった海岸線の「光景」が、あの潜水艦の小さな「窓」から見える白濁した不気味な「世界」の様に見えたのではないかと思ったのです。それほど、この「視界」を遮るお先真っ白の「状況」は、残酷なる「現実」の直視を阻むものであったと言えるのです。そしてもしかしたら、この水蒸気を多量に含んだ「雲海」の層は、地表にまで達しているのではないかとさえ思えたのです。飛行機は左に旋回して着陸態勢に入り、人っ子一人見当たらない「空港」の滑走路には、静まり返った真空状態の「空気」だけが漂っている様に感じられました。そして、空を飛ぶ「鉄塊」はドスンと音を発てて「大地」に降りたのです。多くの夢の「世界」で起こることのように、滑走路はいつの間にか高速道路へと変貌を遂げ、気付くと、私の「視線」はタクシーの「窓」から見える、遥か彼方の海岸線に釘付けにされていました。そこには、「歯」が不規則に抜けたように林立する、かつての防風林が見え、その向こうに在ったはずの「海港」からは、数隻の「船舶」が、あたかも瓦礫で出来た「荒海」を漂流する難破船のように運ばれ、無惨にも「荒野」に打ち上げられていたのです。そして、それらの海に浮ぶ「鉄塊」は、あの夢の「世界」でも決して起こり得ないこととして、数十台の「自動車」にランダムに取り囲まれていたのです。私は、この「光景」の背後にある膨大な「自然」のエネルギーの存在を思い知りました。と同時に、これらの物体間の相互関係があまりに希薄なこともあってか、物体としての個別の「重量」が消失しているという奇妙な感覚を覚えたのです。そして、この凄まじい「光景」は、まるで「運命」の明暗を峻別した白黒写真のように、高速道路を境とした西側と東側の「世界」の対照性を際立たせていたのです。「言葉」を失った私は、溢れ出る「涙」に語らせるしかなかったのです。このモノトーンの「世界」が、ようやく「色彩」の復活を果せたのは、あの懐かしの「記憶」ファイルを何枚もめくり、あなたも見たという「景観」との再会を待たなければなりませんでした。私はタクシーから飛び降り、何かに急き立てられる想いで、船着場への歩みを速めました。そしてそこで、時代を経ても変わらぬ「松島」の、私の「記憶」とも寸分の違いもない、穏やかで心安らぐ「風景」が無傷で残っていることを確認したのです。そして、西方浄土へと沈み行く「太陽」の放つ朱色の「光線」は、深い悲しみに遭った人々への温かい眼差しのように、慈悲心に満ち溢れていたのです。やがて、その「光線」はいくつかの束に収束して、この松島の「湾」全体を包み込むように、さながらベネチアン・グラスの巨大な「器」となって、私の眼前に立ち現れたのです。その「幻影」の「器」の内部では、美しい島影と奇石や赤松の織り成す造形美、その中を自由に飛遊するカモメなどの「実影」が、散り嵌められた「宝石」のように光り輝いていたのです。このベネチアン・グラスを手に取り、内部を覗いて見たいという「欲望」が湧き起こったのは、恐らく帰路の新幹線での「夢」の中であったと想うのです。ハッと気付くと、「記憶」の洪水は止めども無く「器」から溢れ出し、その増水の勢いは「河川」の水嵩を一気に高める「濁流」と化したのです。あらゆる「記憶」が「濁流」に巻き込まれて、猛烈なスピードで後方に流されて行きました。しかし振り返ると、この増水する「河川」に架けられた一本の「橋梁」が不動の佇まいを見せ、その「景観」は、私たちに一種の安堵感を与えてくれたのです。そもそもこの「河川」の両岸には、二本の小道が古から通っていたようです。そして、軽自動車がやっとの想いで通れる西側の小道には、難を逃れて引き揚げられた数隻の「木造船」が前途を妨げていたのです。その上、生き物のようにヒタヒタと波打ち寄せる「水流」は、私たちに増大する「自然」への恐怖感を抱かせずにはおかなかったのです。私たちは、前進するか後退するかの「決断」を迫られていたのです。その時、私の残された「記憶」ファイルから浮び上がった「光景」とは、対岸に咲いた薄紫色をした藤の花房の野趣に富んだ美しさだったのです。それは、あの松島の「自然」に通じる穏やかで心安らぐ「風景」でもありました。そしてきっと、山肌に沿って小高い位置を走る東側の「鉄道」からは、この狭く心細い西側の小道がどこに通じているのかを、「俯瞰」できるに違いないと思ったのです。
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by artbears | 2011-05-30 19:03 | 自然


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
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