夢博士の独白



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記憶から消えた霊峰と消えなかった橋梁、戦闘機と駆逐艦、そして夜空に咲く花火の大輪

この神々の降臨する「場所」と崇められて来た「霊峰」の美しさは、刻々と千変万化する気象条件を映し出す「鏡」となることで、雄大な自然そのものの「頂」として君臨する「天命」を与えられて来たからこそ、このように神々しく観えるのだと想ったのです。それは、人間の知覚能力の何万分の一という微細で精緻な時間的単位の「世界」では、決して同一の「現象」が二度と起こり得ない「奇跡」の連続から成り立っているという「構造」が存在し、その本質的な普遍性が人間の「視覚」を通して認識され、この完璧であるという意味において特別な「霊峰」に、人々は超越的存在としての「神性」を観るのではないかと想ったのです。つまり、神(普遍)にして山(個物)である「富士」(特殊)は、聖霊降臨による三位一体となった「霊峰」として存在していたのです。そして、この純白の穢れなきマントを羽織って毅然と聳え立つ「富士」は、燦々と降り注ぐ太陽の光を全身で受け止め、それを惜しみなく照り返すことにより、自らを荘厳に光り輝く「存在」へと高めていたのです。私は、「神」が揺るぎなき「基準」であるとするならば、この「富士」の絶対的な「美」としての価値基準はこれからも否定されることなく、永遠に保証されるに違いないと思ったのです。束の間の忘我の時間を過ごした私達は、厳かな気持ちを忘れることなく、何重にも防弾機能を施された重いガラス扉を開くことにしました。すると、初春の訪れを告げる「恋文」のように爽やかな「春風」が、一気に「室内」に流れ込んで来たのです。ところが、ベランダは事もあろうに「戦闘機」のコックピットとして改装が成されていたのです。コックピットの前方には計器板があって、数多くの計器類が色鮮やかに点滅し、その「光景」はまるで、神秘的なスケールと表現するしかない「宇宙」につながる漆黒の「夜空」を、より一層際立たせるクリスマスツリーの「電飾」のようにも観えたのです。しかしやがて、胸いっぱいに吸い込んだはずの「春風」は「秋風」に変じて、周りには一瞬にして「緊張」が走りました。防空サイレンが鳴り響いたのです。「状況」の急変を感じ取った私は、あなたの同意を得て、準備された「戦闘服」に身を固め、一人で操縦席に着座することにしました。ドーム型の風防は「視界」に制限を与えるものでしたが、前方のガラス面には様々な「情報」が文字と数字で表示されていたのです。しかし、それを一瞥するや否や、私の「頭脳」に血液が逆流を開始したのです。「情報」は全て左から右に書かれるアラビア語で表示され、私は完全に「文字」による「情報」から隔離された「状況」に置かれたのです。目の前には、あの「富士」の姿は消えて無くなり、代わりに「視覚」を通して認識できる「情報」として、二隻の「駆逐艦」が月に照らし出された二本の白い帯状の「航跡」を残して、静かに「湖面」を移動していたのです。私には、この「光景」が情報操作による捏造された「映像」なのか、私の深層心理の中で肥大化している「恐怖」が「映像」として情報化されているのかが、判別の下しようがなかったのです。ともかく「世界」は異常事態に突入して、「歴史」は転換の新たなページを開いたのは間違いないようです。あの「経済」の薄気味悪い心地良さは、グローバル化の過渡的で一時的な「現象」だったのです。そして、世界中の「神」と崇められた「偶像」は、その「基準」自体を否定され、総体としての価値の「喪失」が始まったのです。その時、轟音とともに二隻の「駆逐艦」から一斉に艦砲射撃が開始されました。次々に「砲弾」は着弾し炸裂し、至る所で「炎上」が始まった「館内」は騒然とした雰囲気に包まれたのです。しかし、ベランダへ飛び出したあなたと操縦席から降りた私は、不思議と冷静な「心境」で眼下を見下ろせたのです。道路は「群集」で埋め尽くされ、彼等は湖畔を迂回しながら「対岸」を目指していました。すると突然、「群集」の向かう方角の「夜空」に黄色の「火玉」が一直線に上昇し、その昇り詰めた「頂」で美しく開いたのです。「星」は球状に飛散して、やがて「菊」の花のように光の尾を引きながら、「花火」は大輪を咲かせたのです。そして、「枝垂桜」の花のように燃焼しながら落ちる「光」が照らし出したのは、「対岸」へと渡されたアーチ状の「橋梁」でした。私達は慌てて、過去の「記憶」のページをめくりました。そこには確かに、この「橋梁」が共通の思い出として残っていたのです。そして、あの絶対的な存在としての「富士」もまた、「記憶」の雲が晴れ渡るにしたがって、その神々しい「雄姿」を見せ始めたのです。
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by artbears | 2011-02-28 19:49 | 世界


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