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夢博士の独白



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母なる海の周期と父なる太陽の周期、一つの過ちを犯した遇者と二つの過ちを犯した賢者

波打ち寄せる穏やかな砂浜が前方に見え、そのもっと先には風打ち突ける険しい絶壁が聳え立っていたのです。あの母のように私を優しく包み込んでくれた「月」は、いつの間にか、この父のように私を厳しく突き放とうとする「太陽」と置換わっていたのです。しかし、昼夜リズムは、過去から延々とこのように刻まれ、世界の「意味」は一方的に与えられていたのです。やっとの想いで「海」から這い上がることができた私は、私の繊細なる皮膚とそれを覆う粘膜を一気に剥ぎ取ろうとする太陽の「光」を一身に浴びることになりました。そして、25時間でセットされていた私の体内時計は、約1時間、正確には50分間の短縮を強いられることになったのです。つまり私は、地球の周りを公転していた月の「秩序」から、太陽の周りを自転している地球の「法則」に従って生きることを受入れざるを得なかったのです。私には、もう「ひきこもり」が許されなかったのです。私には、砂浜から這いずり出して苛酷な乾燥地へと向う「使命」しか残されていなかったのです。波打ち際に転がる巻貝の亡骸からは、様々な「色彩」の血液のような「液体」が流れ出していました。その「液体」が、引いては寄せる潮汐リズムとシンクロして生み出す様々な「形態」は、それらの色彩の「差異」が認識されて初めて、その「差異」の相互関係があって始めて、不確定性や選択可能性と言った哲学的な「概念」が生まれることを示唆していたのです。私は、暫くの間、この自然がオートマチックに描く受動的でもあり能動的でもある「表現」を鑑賞していました。すると、その複雑系の「絵画」から、一本の「意識」を宿したような強く黒い「線」が生まれて来ていることに気付いたのです。それは、全ての「色彩」の波長を貪欲に吸収する「意欲」から生まれているのに違いないのです。そして、その「線」が自らを「環境」と区別することを欲望し、内部エントロピーの増減基準を自らで「管理」する選択主体(生命システム)へと進化しようとしていることに気付いたのです。やがて、その自由意志を持った黒い「線」は、急速に邪悪な「感情」を膨らませるようにして、次第に巨大に成長する黒い「蛇」となって、この無防備極まりない私に接近して来たのです。思わず後退りをしようとした私は、私の両足が石のように無機的で血の通っていない「物質」と化していることを視て、更に驚きを隠すことができませんでした。ところが、有機的な選択主体となった「蛇」の欲望は、今や「情報」を認識する能力を失いつつある私の「肉体」には向けられることなく、私の目の前で「とぐろ」を巻くことを決め込んだようなのです。その「とぐろ」は「クルクル」と細長い「形態」に巻き上がり、最終的には、まるで巨大な縄文土器のような「存在」となって、私の目の前に聳え立ったのです。私は、この観念論でも実在論でも捉えきれない、あたかも「神」のように君臨する存在の「実体」が知りたくて、恐る恐るこちらから接近を試みました。先ず、その縄文土器に施された文様を観察すると、「蛇」のウロコのような隠微で妖麗な艶を放っていることが視えました。次に、その文様に触れて見ると、柔肌に彫られたタトゥーのような嗜虐的で煽情的な感触を覚えたのです。私は、この縄文土器の「実体」を少しでも認識するために、あらゆる思考を試みました。しかし、断言できることは、物理学の基本的概念である物質やエネルギーに還元することができないと言うことだけでした。なぜならば、この縄文土器には、「情報」を認識する能力が備わっているように視えたからなのです。それは、エントロピーを低減しようとする「意志」が存在しているからに他なりません。私は、この巨大な水瓶の天辺にまで、「ベトベト」した粘液を両手に付着させながら這いずり上がって、恐る恐る内部を覗き込みました。するとそこには、透き通るような「液体」がたっぷりと満ち満ちて湛えられていたのです。そして、「鏡」のような水面から垂直方向に遠く遥かに深まった「空間」には、二人の「旅人」の姿が水中に起つ蜃気楼のように揺れて視えるのでした。先を急ぐ一人目の「遇者」は、自然を愛し偶像を崇拝するという過ちを犯して、静かに「視界」から消え去って行きました。次に続く二人目の「賢者」は、自然を憎み偶像を否定するという過ちを犯したにもかかわらず、未だに「死界」へと消え去ることができずに絶望の淵に佇んでいるのです。不可視の理性的な「神」も死にました。そして何よりも、この二人目の「旅人」の不幸は、元来た道を再び引き返すことができないことに在るように観えるのでした。
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by artbears | 2010-06-30 21:17 | 哲学


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