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夢博士の独白



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四門から成る城郭都市と出家した王子、黒々とした駿馬の彫刻、隠された願望としての鷲

アルマジロの鱗甲板のように堅牢、かつ緻密に石組みが施された円形ドームの四方の壁面には、四方の水平線が見渡せる正方形の「窓」が空いていたのです。そして、これらの「窓」を通して、太陽は、日出に放たれる最初の光から日没に放たれる最後の光までの軌跡を、不可視の双曲線の「絵画」として、この建物の床面に日々描き続けて来たのです。この建物の主である「王子」は、東西と南北の「窓」を結んだ線がクロスする位置に座して、沈思黙考して風を日々読んで居ました。どちらの方角から風が吹いて来ているのかは、それぞれの「窓」に吊るされた水玉ドットのカーテンの靡く様子でも判断できたのです。そもそも、この城郭都市の歴史的由来は、ベンガル湾に臨む海洋国家なのか、それともガンジス河の下流に位置する内陸国家なのか、その地政学的関係性が、私が「夢」の中で抱いた「疑問」の出発点だったのです。何れにしろ、「王子」には、この城郭都市が近隣の勢力により蹂躙される光景を「先見」できるだけの政治学的関係性が理解されていたのです。風は東から吹き始めました。「窓」から見下ろすと石段は「門」まで続き、その先には老いた人々の姿が視えました。それから風は南から西へと移動して吹き、それぞれの「門」の先には病に苦しむ人々と死を悼む人々の姿が視えたのです。最後に風は北から吹き始めました。「窓」から見下ろすと石段は「門」まで続き、その先には生まれたばかりの「赤子」が、二人の儀仗兵に見守られながら一舟の小船に乗り込み、まさに出帆しようとしていたのです。その光景を視た「王子」の顔には一瞬の笑みが浮びました。「赤子」の如く、あらゆる私的所有物に対する執着を捨て去り、「生苦」を引き受けることによる輝かしい修行者の出で立ちの姿が「予見」されたに違いありません。私は急いで石段を駆け下り、小船が陸地から離れる寸前のところで飛び乗ることに成功しました。眼下には、久しぶりの獲物を逃したと悔いる巨大な「黒鮫」が尾鰭を翻して、悠然と大海を目指して泳ぎ去る姿が視えたのです。いつの間にか、小船の船首に居て見張り役を仰せ付かることになった私は、耳元で小鳥のさえずりのような不可思議な言葉が響いていることに気付いたのです。振返ると、あの水玉ドットのカーテン生地をネクタイに仕立てて、スキンヘッドの粋な伊達男に成長した「赤子」が、インド訛りのフランス語で語り掛けて居たのです。フランス語の素養の無い私は、唯一の聞き取ることのできた「jouissance(享楽)」という言葉を手掛かりに、私が「夢」の中で抱いた「疑問」の終着点を考えたのです。なぜに享楽的生活に耽溺していた「王子」は、貧困という現実的生活における「母子」の紐帯の象徴であるカーテン生地のネクタイを締めているのか。なぜに享楽的生活を自主的に断念した「王子」は、ある日突然、剃髪して涅槃的生活とも呼べる出家を決意したのか。私の「疑問」は、まどろみの大海の中で、巨大な渦となって回転し始めたのです。すると、海面を真二つに切裂く鋭利なナイフのように視える「黒鮫」の背鰭の前方に、波が砕かれる岩場を台座とした「駿馬」の彫刻が次々と現れて来たのです。それらの彫刻は、「死(種族保存)」への「欲動」が凝固したかのように黒く硬く輝き、前脚を高く上げて嘶く姿には、「死(自己破壊)」への快楽とも苦痛とも取れるエクスタシーの表情を垣間見ることができたのです。小船は、海面に岐立する彫刻群によって、否応がなく増幅された荒波に翻弄されながらも、次第に穏やかな波間に航海の軌跡を描くようになりました。しかしその頃には、生存に必要な食料が底を付く事態が訪れていたのです。波一つ起たない静かな海面に染み入るような沈思黙考の時間が経ちました。そして、ある時突然、「王子」の顔には一瞬の笑みが浮んだのです。「王子」は、食料は絶たれたのではなく、食料を絶つことを主体的に選んだのだと呟いたのです。またしても、「欲望」の実現に対する願望は「願望」の実現に対する欲望に摩り替えられたのです。その時のことでした。空を仰ぎ見る「王子」の頭上には、天地の間を自由に飛来することができるとした巨大な「黒鷲」が旋回していたのです。恐らく、その生き物は、「王子」の「生(個体保存)」への隠された「願望」を「象徴」していたに違いありません。そして、小船にまで舞い下りた「黒鷲」は、その両爪で「王子」をしっかりと掴み取り、「王子」の晴れやかな笑顔とともに、「天(涅槃的生活)」にまで送り届けるべく舞い上がろうとしたのです。
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by artbears | 2010-05-27 18:12 | 宗教


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