夢博士の独白



<   2010年 01月 ( 1 )   > この月の画像一覧


白狐の仮面と永遠に続く赤い鳥居、縄跳びをする女の子と稲穂をくわえた黄金色の野狐

一人「目」と二人「目」のタクシーの運転手の違いが、その「土地勘」と「現世観」にあったことは、私たちの間では、無言の同意がなされていたことでした。確かに「目」は「口」ほどに物を言っていたのです。後は、電車がどちらの方向から来て、高架になった道路の真下を通過するかに、私はいつものように秘かな賭けをしたのです。そして、後部座席の左ドアに近く座っていた私は、右から迫って来る「ゴォー」という地響きに催促されるように、静かな決意を込めてドアを開き、独りで道路を歩くことを選択したのです。そのことが、最善のシナリオを無意識的に実行していたことは、後になって、あなたからの密かな耳打ちがあって、初めて分かったことなのでした。車の渋滞は重態となって、T字路の道路は車で埋め尽くされていました。そして恐らく、左への一方通行の先の十字路では、車を置き去りにした「群衆」で溢れかえっているに違いないと想ったのです。そして、これだけの大勢の人々が何を求めて集まり、いったい何を欲しているのか、そしてその中に在って、私たちの目的と欲望がいかに彼らとかけ離れたものであるかを想ったのです。徒歩を選択した私は、次々と車を追い越して行けるという「優越感」に浸ることができました。しかしそれも束の間、半開きになったタクシーの車窓から、こちらを怪訝そうに見遣っている三人「目」には、「黒目」が全く消えて無く、少し銀色に発色したような「白目」には、まるで白狐の仮面に空いた二つの「穴」から、その裏側を覗き込むような「空虚感」を抱かざるを得なかったのです。つまり、どちらの「穴」からも、仮に公共性の光が差し込んだとしても、それに反応する感情(羞恥心)は、その私性の暗闇の何処を探しても無いような「諦念観」を抱かざるを得なかったのです。確かに「穴」も「口」ほどに物を言っていたのです。そして、事態は私の想像したような展開をしたのです。人々は次々に車のドアを開けて、口々に不平を言いながら、各々に白狐の仮面を付けて、次々に「群衆」の列に並ぶのでした。警察官のメガフォンからは、「禁止」(規範)の言葉が、神経を逆撫でする音量で、やはり一方通行で流れていました。一旦、この仮面を被ると、普遍的で超越化された神の眼差しからはもちろんのこと、世俗的で鏡像化された他者の眼差しからも「自由」になれるのでした。私が後方を見ると、白狐の仮面の「大群」が波打つように上下しながら、増殖して押し寄せて来る光景が観えるのです。私の背中は後ろから押されて、引き返すことは許される状況ではなかったのです。私が前方を見ると、周到にも、後頭部にまで仮面を付けた人々を散見することが出来ました。そして「群集」の中に埋没した私は、左右に聳え立つ神と獣の中間的存在(霊獣)としての二頭の「白狐」の見下したような眼差しを感じながら、永遠に続くのではないかと想われる赤い「鳥居」のトンネルに呑み込まれたのです。「鳥居」の柱と柱の間からは、笹の葉が風に打ち靡いている様子が視え、黄金色をした野性の狐たちの走り抜ける姿が視えたのです。木々を透かして観える遠方の景色には、黄金色をした稲穂がしなやかに弧を描いて垂れている様子が観えたのです。すると突然、私は、この赤い「鳥居」に息苦しさを感じ、このトンネル内に渦巻く「群集」の巨大な「欲望」に圧死してしまう「恐怖感」を覚えたのです。抽象的な言葉では語り尽せない「群衆」の夢や願望が、欠如のシニフィアンとしての「鳥居」のトンネルに充満していると感じたのです。私はまたしても、静かな決意を込めてトンネルから抜けて、独りで鎮守の森を下ることを選択したのです。やがて平野に辿り着いた私は、コンクリートで固めた畦道を歩き、用水路に流れるせせらぎに心理的な「安心感」を覚えながら、あの「喧騒」の一日を振り返っていたのです。すると前方から、赤い服を着た双子の女の子が縄跳びをしながら近付いて来ました。女の子たちは、私とすれ違う際には縄跳びを止めて、丁寧な挨拶をして通り過ぎて行きました。そして振り返ると、二つの円弧が規則正しく空中に描かれながら、次第にその姿は視界から消え去って行ったのです。そして今後は、その光景と入れ替わるようにして、何頭かの黄金色の野狐たちが、「豊穣」の象徴である稲穂を「口」に銜えて、私に近付いて来たのです。私は、この「寂寥感」でも「充足感」でも捉え切れない、ただ「このようなもの」としての「世界」の中にあって、私の「存在」を証明できる「言葉」が、あなたの「口」から耳打ちされることを待っていたのです。
d0078609_1483045.jpg

[PR]
by artbears | 2010-01-25 19:25 | 宗教


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
検索
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧