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夢博士の独白



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霧なのか靄なのか、狂ったナビと行く手を阻む鉄柱、渦巻く竜の気炎に揺れる和蝋燭の灯

まるで水の中を老眼鏡を掛けて運転しているかのように、この見慣れたはずの街の中の風景は異質で異様な「不透明感」に満ちていたのです。時たま、横断歩道で立ち竦む黒や白の「盲導犬」の不安そうな表情の奥にも、この霧とも靄とも知れない「不透明感」が立ち込めているのに違いないと思ったのです。そして、そうこうしている間にも、この地上の何処かに存在するコンピューターの内部では、この天上の何処かに存在する複数の衛星からの情報を元に、高度な演算が気が狂ったような高速でなされて、私たちの三次元の「位置関係」が刻々と正確に情報化されているのです。24基で構成された衛星コンステレーションの内の少なくとも4基のGPS衛星は、高度20,000km、軌道傾斜角55度、同期12時間の準同期軌道上を移動しながら、私たちの一挙一動を監視する「眼」となって、それら複数の「眼」は、地球を覆う巨大な管理の「ネット」を形成しているのです。そして、常に監視され管理されているという「環境」こそが、私たちの生存条件を左右する新たな「自然」として、私たちの「意識」に「恐怖」の森林として立ち現れようとしているのです。そして、その森林の奥には、「擬似乱数表」と「暗号解読鍵」を携えた「悪魔」のような明晰な「頭脳」が視え隠れしていたのです。情報は錯綜し、側道を走ることを強いられることになった私の「ストレス」は高まる一方となり、私の愚鈍な「頭脳」の内部では、点滅する赤信号の数字(22)と変色する黄信号の数字(40)が、まるで軌道を逸脱した衛星のように乱れ舞う惨状を呈していたのです。音楽は、第28番の快活さの中に異様な緊張感を感じる「行進曲」風の第2楽章が終わろうとしていました。やっとの思いで辿り着いたETC入口ではありましたが、何とGPS衛星からの「ナビ」への指令は、次のETC出口までの往復を強いるものでした。私の剛直な「身体」の内部では、あの激しい気性の「竜」が目覚め、この憎き管理の「ネット」を食い破り、その憤怒の激情は、のた打ち回りながら吐かれる「気炎」と化したのです。「愛車」のハンドルは素早く右に切られ、赤い三角コーンは容赦なく左に薙ぎ倒され、「愛車」はUターンして、疾風の如くに自走を開始したのです。まさにその時、時を同じくして、私と私の「愛車」は、あの第29番の第一楽章の始まりに、とてつもなく巨大な空間が壁のように存在していることを知ったのです。その壁の向こうに存在する「古典的規範」の持つ厳格で高貴な力強さを予感し、その深遠で純粋な精神性に憧れ、怒涛の如くに荒れ狂う嵐のような「世界」に身を投げ入れる悦楽を想ったのです。「生命」は決して管理されるものではなく、自ら「燃焼」すべきものであると思ったのです。「愛車」は、狂った「ナビ」の誘導を無視して、疾風怒涛の如くに高速道路を飛ぶように駆け巡りました。そして、最後のETC出口を通過しようとした時には、黄昏が忍び寄るようにして訪れていたのです。まさにその時、時を同じくして、私と私の「愛車」は、あの第29番の第三楽章の終わりに、結晶化した知性と理性が美しい調べとなって、夕陽のように光り輝いていることを知ったのです。道路の道端には、数日前に降ったと想われる雪が残っていました。道路の両側には、遮音を目的に造られたと想われるコンクリートの「壁」が、一切の雑音を拒絶するかのように立ち並んでいたのです。音楽は、第30番から第31番へと続き、一層の叙情性を深めた「世界」は、この閉ざされた空間に鳴り響き、最後の第32番で、そのクライマックスを迎えたのです。一定の律動を伴った旋律は細分化され、常に主題を想起させながら変奏され、畳み重ねるように織り成した楽曲構造は、今度はその内部から構造自体の自立的変化を促しているのです。大きな流れの中の細部の絶え間ない変化、そこに悠久の時間が閉じ込められているのです。ところが突然、静寂な思索的時間をぶち壊すかのように、「愛車」の前方には、行く手を阻む二本の「鉄柱」が出現したのです。しかし、その先には、漆喰の「壁」が立ち並び、霧とも靄とも知れない視界の向こうには、いつかどこかで視た懐かしの「高原」が拡がっていたのです。そして、その「高原」には、夏には灰白色の実を付けるという「ハゼ」の赤く紅葉した木々が観えたのです。私は、意を決して一本の「鉄柱」を抜き去ることを決め、再び「愛車」に戻りました。そして、後部座席を振返った私の視たものは、風が無くとも一定の明るさを保ちながら揺らぎ燃える「和蝋燭」の気丈で優美な「燃焼」の姿だったのです。
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by artbears | 2009-12-30 17:22 | 音楽


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
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