夢博士の独白



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水面上を覆い尽くした鬼蓮、水面下の呼吸困難になった雷魚、蜂の巣に受胎した蓮の種子

炎天下の中を汗をかきながら、真ん丸い小山の逆転した姿が水面に映し出されている「溜池」の周りを歩くことを日課としている私は、いつものように右回りに周ることを選んでいたのです。それが、やはり小山を切り崩して造ったと思われる「山城」の周りを歩く時とは、全く逆の「回転」であることに気付いた私は、やはりいつものように立ち止まってしまうのです。そんな時に耳の奥から聴こえる音楽は、「Don’t Take Me Alive(私を生かしておかないで)」の聴き慣れたフレーズなのです。「溜池」の土手に造られた「遊歩道」には何人かの「老人」が先行して歩いているのですが、彼らの背中には「背番号」が付けられていて、私は番号の若い順番に追い越すことを心掛けていました。しかし、55番の「背番号」を付けた「老人」の背中が迫って来ると、どうしようもない疲労感が胸焼けとなって込み上げて来るのです。なぜならば、彼を追い越す際に手渡される一箱の「ダイナマイト」の重さと、それを抱えて一夜を過ごすことの過酷さを思い出してしまうからなのです。ところが、そうした私の億劫さに反比例して、私の歩みの速度は年を追って速くなるのでした。マレービッチの絶対的な「正方形」を意識した「溜池」の四隅には、それぞれ「四阿(東屋)」が建てられていて、南東の角の「四阿」の内部に置かれたベンチには、白いレースのドレスを着たあなたが横たわって居たのです。ドレスの裾から視える白い足首には、赤い目をした白い蛇の双子の子供が巻き付いていました。あなたの爪に塗られたマニキュアの赤と、白い蛇の目の赤は、まるでルビーの原石の放つ魔性の光のように、交互に照応して、私を幻惑の淵へと誘うのでした。「法律の代理人」でも「会計士の息子」でもなかった私は、それでもやはり、私の内部に純水で満たされた湖のような瞳をした黒い大蛇が、とぐろを巻いて居座っていたことを知ったのです。そして、私はいったいあと何箱の「ダイナマイト」を運べばよいのであろうか、とも想ったのです。全ての生命の息の根を止める強い陽射しの西日が、水面全体を満遍なく照らす時間になると、いつのまにか繁殖の極に達した鬼蓮の大きな葉は、もがき苦しみながら、裏面の不気味な黒い縞模様を曝け出して「反転」するのです。その合間を狙って、酸素不足のために呼吸困難に陥った雷魚は浮上して、「パクッ」と空気呼吸をして一目散に水底に戻るのでした。私は目を閉じて、「溜池」の内部で起っている出来事を想像して視たのです。そこには、水面を覆い尽くした鬼蓮のために「光」の遮断された「暗黒の世界」が拡がっていました。鬼蓮の葉の表面からは猛烈な勢いで「水」が蒸発しているために、水位は刻々と下がっているのです。空気との接触の乏しくなった水面からは、「酸素」の補給が困難な状況が生み出されていました。「危機(リスク)」が進行していることは、火を視るよりも明らかなのです。しかし、ナイトが指摘したように、この「危機」は計算可能なものであり、予測不可能な「不確実性」に根拠を置くものではなかったのです。「暗黒の世界」が救われる可能性はあると判断して、私は目を開けたのでした。ところが、横たわって居たあなたは起き上がり、無言で見る視線の彼方には、なんと、干上がった「溜池」の真中に鬼蓮の葉で出来た「島」が現出しているではありませんか。そして、その「島」の周りには、残された僅かな水で出来た「水路」が在るのです。その「水路」では、空気呼吸は出来るのですが、鰓呼吸により二酸化炭素を水中に放出できなくなった雷魚が、もがき苦しんでいたのです。それは、まさに生残りへの「自己改革」の必死の姿だったのです。鬼蓮の葉は次々に枯れ、それに従い腐臭は周りに漂って来ました。「自己改革」を断念した雷魚の屍が累々と転がっているのです。そうした「地獄絵」のなかにあって、一方では、何本かの「蓮の花」が見る見るしなやかな茎を伸ばし、次々に清楚な大輪を咲かせていくのです。「生」と「死」は同時に進行し、蓮の葉で出来た「島」は、蓮の花で出来た「花園」へと変化したのです。次ぎの「変転」は、そのような時間の連鎖のなかで起きました。あなたの「蓮の華」のように晴れ渡った笑顔に急速に暗雲が起ち込めて来たのです。その理由を確かめようと、あなたの視線の彼方を再び探し求めた私が視たものは、美しい蓮の花の「花床」で、白黒の蛇が絡み合っているというおぞましい光景だったのです。そして、蜂の巣状の「花托」では、やがて未来を託された黒く硬い「種子」が宿ろうとしていたのです。
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by artbears | 2009-07-30 19:18 | 音楽


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
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