夢博士の独白



<   2009年 05月 ( 1 )   > この月の画像一覧


突如、攻勢を開始した不安定なRNA、突然変異による指揮官の変身は何を予言するのか

水際での検問を上手くすり抜けたRNAの戦士たちは、地中に重なるように堆積した地層に分散して侵入を開始したのです。CNNもBBCも、そのことの報道で持ちきりなのですが、そのことも含めてRNA側の作戦であったことに誰も気が付かない状態が続いていたのです。地中の各層には、それぞれにトンネルが用意周到に掘られていて、この作戦が一朝一夕で立案されたもので無いことは明らかでした。こうして「パンデミック」は、百年に一度の地球規模での金融危機の直後に起こったのです。トンネルの壁面からは、人間の手や足、そして口、鼻、耳などのさまざまな部分や器官が、まるで人間の内臓や血管の内壁に飾られた白いゴム製のオブジェのように突き出ていたのです。トンネルの奥の暗がりに在る水際では、定期的に処刑が行われているようでした。そのことは、日本刀が振りかざされた時に放つあの「キラッ」とした閃光と、暫くして聞こえる不気味な切断音、そして空中に飛び散る半透明で粘着性のある液体の飛沫から推し測ることができたのです。ああ、私は今夜も、とんでもない「事件」を目撃することになったのです。ああ、出来ることなら、一刻も速く、このトンネルから抜け出したいと、「意識」は救いの手を求めるのですが、如何せん、「狂気」の黒い手は、私を再び引きずり戻すのでした。RNAを遺伝子とする生物の攻勢が、あの14世紀の「黒死病」に始まる彼らのレジスタンスの歴史の古層から蘇えり、異議申し立ての行動は前触れもなく開始されたのです。豚の体内でひっそりと潜伏していたはずの彼らが、突如、凶暴なRNAの戦士に変身を決意した「動機」は、表面上は現在の世界を支配しているDNAを遺伝子とする生物にとっては、永遠の秘められた謎として、封印された「パンドラの箱」として語り継がれて来たのです。今夜も、まるで「暗黒の中世」のような熱い夜だったのです。そして、私が寝返りを打ったのが、そもそもの過ちだったと反省するのです。私はその時、水際に立って、先程までは日本刀をかざしていたはずの、そして今度は血の滴る斧を持った斬首執行人の目を凝視してしまったのです。このように、RNAの戦士たちは、自由気儘に変貌自在に変異を遂げるのです。彼らは我々とは正反対で、不安定なライフスタイルを好むのです。それは、彼らの所持する「武器」も然りなのです。我々が走り出したのは、ほぼ同時であったと記憶します。全速力で逃げようとする私は、私の内部に「危機に瀕したもの」としての「不安」(対自)が生まれ、生存という「目的」に拘束されている存在論的構造としての「価値」は明らかにされたのです。暫くして、必死で逃げることに私を忘れていた「私」は、トンネルの地面には黒いゴム製のベルトコンベアーが設置されていて、その回転のスピードに歩調を合わせて走っている「私」に気付いたのです。振返ると、中世ヨーロッパの騎士に変身したRNAの戦士もまた、私と同じような行動を取っているのでした。そして、我々の行為が「自然的自発性」に基づいたものである限り、我々を隔てる「距離」は縮まらないと判断したのです。私の「意識」は知らぬ間に、世界の諸存在についての「恐怖」から、自己についての反省的「不安」を経て、世界の命じるままに生きることの「安心」という「日常性」に復帰していたのです。ところが再び振返ると、RNAの戦士は修道士に変身しているではありませんか、そして振返る度に、皇帝、農奴、領主、魔女、教皇と目まぐるしく変異しているのです。私は、これは、「新しい中世」の到来を「予言」しているに違いないと直感したのです。そこでは、単一の「権威」が存在することを受け入れない、多次元のテンポラリーな「権力」が仮想的に散在する世界が立ち現れようとしているように思われたのです。ところが困ったことが、私の身の上に起こったのです。仮に、あの私を追跡するRNAの戦士が、全権を掌握する指揮官であったならば、いっそこの身を彼に委ねるという「選択」も在り得るのではないか、というキルケゴールの言う魅惑的で両義的な「甘い不安」が、私の脳裏に蕩けるような味覚として拡がったのでした。私は、「恐るべき自発性」に基づく、恐ろしいほど「自由」な「私」に出会ったのです。その時のことでした。隣のプラットホームに、上りの新幹線は予定通りに入線して来たのです。乗客は全員が「マスク」をしているのです。未だ「感染」していないことに絶対的な自信のあった私は、あらゆる迷いを瞬時に捨て去り、新幹線に跳び乗る決断を恐るべき速さで下したのでした。
d0078609_14433260.jpg

[PR]
by artbears | 2009-05-26 12:51 | 哲学


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
カテゴリ
以前の記事
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
検索
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧