夢博士の独白



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なぜに蒸気機関車は逆進したのか、はたして透明の魚たちの歌声は聴こえたのだろうか

古代ギリシャのエンタシスを想わせる「円柱」は、中央部分が心なしか膨らんでいて、その「ふくらみ」の内部には、大理石でできた「胎児」が永遠の眠りについていると、影法師たちはしきりに噂していたのです。そして、それらの円柱が整然と規則正しく並ぶ左右の「回廊」からなる空間は、誇張された遠近法のためなのでしょうか、「精神」が不安を覚えることとなり、その居心地の悪さが、返って精神の望郷の念を高めることになっていたのです。そして、遠近法が消失点に向かう「地平」には、お決まりの「黒い蒸気機関車」が「もうもう」と噴煙を逆方向にたなびかせながら猛スピードで逆進していたのです。まさに、デ・キリコの形而上学的な「世界」が、ここに再生産されていたのです。「黒い蒸気機関車」は、二つの「太陽」の強い陽射しからできる円柱のシンメトリカルな「影」が交叉する時空間を仮初の軌道としながら、回廊と回廊に挟まれた広場の中央に鎮座する「噴水」の手前で止まったのです。「黒い蒸気機関車」の最後尾のコンテナからは、ブリキ製のバケツが数個、白い喪服を着た影法師たちにより、次々に運び出されることになりました。バケツは噴水の周りに並べられて、夜明けまでには噴水の水で満たされるという、暗黙の約束事が遠い過去から延々と受け継がれて来ていたのです。そして暫くすると、二つの「太陽」の一方が「月」となり、残されたもう片方も「月」となりました。太陽の突き刺すような「光の束」は、月の身体を優しく包み込むような「光の衣服」へと置換わったのです。夜が明けたことに気付いたのは、それぞれのバケツの「水面」に、揺れながら浮かぶ紙切れのような「ぺらぺら」の太陽の「分身」たちを視つけた時のことでした。やがて作業着に着替えた影法師たちは、正方形の板の上に、色とりどりで高さも太さもさまざまな木製の円柱を並べ立てたのです、そして、その森林を模したオブジェのような「作品」を、バケツの中に惜しげもなく放り込んだのでした。バケツの「水底」には、もう一つの「森林」が生まれることとなり、暫くすると、木々の間を泳ぐ透明の「稚魚」たちの姿を視つけることができました。そして、ある種の集団による規制されたリズムにテンポを合わせながらも、個々が自由に泳ぐ魚たちの姿に見惚れながら、「精神」は再びバランスを失い、「意識」の消失点に向かって行ったのです。余白のような時間が刻まれたことは間違いありません。「湖畔」を囲むように張り巡らされたフェンスを前に、両の手にはバケツを持って立っている「私」に戻ることができたのは、あなたに「釣りがしたいのね」と呼び掛けられた時のことでした。フェンスの網目の間からは、それぞれに分割された「湖面」が、光の強弱による湖面の表情の繊細なる差異を映し出していました。私は、あなたの問いに「うん」と頷いて答えたのです。すると、この美しい「湖」を管理していると思われる老婆が近付いて来て、フェンスの内側から扉を開け放って、私たちを「湖岸」に招き入れてくれたのです。私たちの足は、無邪気な子供たちの声のする方向に自然に向いて行きました。「湖岸」には、静かに波が打寄せていて、それらの波は子供たちの「足跡」を消してしまうのですが、いつの間にか、また新しい「足跡」は付いているという、その単調な繰返しがとても心地良く感じられたのです。私が一方のバケツの中に、あなたがもう片方のバケツの中に、冷たく澄んだ「湖水」を徐々に導き入れることにしました。透明の「稚魚」たちは、「湖」へと旅発ちの準備ができたようで、一匹、また一匹と、尾ひれを大きく振りながら、「湖水」の中央に向かって姿を消して行ったのです。その「入水」の儀式が終了することを確認していた老婆は、私たちに立派な釣竿を二本、手渡してくれました。私たちは、釣り糸を「湖面」に垂れて、静かに「その時」が来るのを待つ決意をしたのです。すると「湖面」は、痙攣を起こしたように僅かに振動を繰り返し、その振動は「波紋」となって、湖全体に及ぼうとしていることが分かりました。それは、あの小さな透明の「稚魚」たちが、今やすくすくと育った「成魚」となって、声にはならない「歌声」でもって、来るべき「春」の豊かさを歌っているからに違いなかったのです。そして、この美しい「湖」に湛えられた「水」の容積を想わせる、重々しく威厳に満ちた重奏低音からなる「音楽」が、湖全体を一つの楽器のようにして響かせながら聴こえて来たのです。そして釣竿を上げると、そこには、透明で細長くしなやかな魚形をした「キス」のような魚が飛び跳ねていたのです。
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by artbears | 2008-04-27 15:42 | 夢白


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