夢博士の独白



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記憶を食するというクラゲの群れ、それは海面に映る白い雲のように非実体的であった

美しい島々が点々と絶妙に配置されたこの風光明媚な入り江に佇んで、私は何度も大きく深呼吸をして、この体内に巣食った「悪い想い」の総入れ替えを試みたのです。大きく息を吸い込んで、下腹を「ぎゅっ」と圧縮するようにイメージして、今度はそれを逆流させるかのようにして、胃壁に付着した「悪い想い」を浚えるようにして吐き出すのです。それを何度か繰返していると、遥か遠方の外海に視えていた「私の船」は、力強く「ぐんぐん」と速度を増しながら入り江に入港して、私の眼前に、その「白い巨体」を露にするのです。そして私は、この「巨船」を仰ぎ見るたびに、この「白船」が何を表象しているのかを考え込んでしまうのです。桟橋から船には黒装束の船員たちにより、一枚の板が渡され、白衣にボストンバックを下げた医者と数名の看護婦たちが、慌しく乗船を急ぐ姿が視えました。出帆の汽笛に催促されるようにして乗船を強いられることになった私は、あなたの存在が希薄に感じられる船内の雰囲気に「不安」を覚え、医療チームの目から逃れるようにして、船倉への階段を降りたのです。そして、船底に最も近い場所と考えられる木製の扉の付いた食糧庫に身を潜めることにしたのです。 食糧庫には内側から掛けられる「鍵」が無く、その上、数多くの剥きかけの「馬鈴薯」に鋭利な「ナイフ」が突き刺さっているという「光景」は、私の「心臓」の心拍数を加速モードに切り換えることになりました。私は居ても立ってもいられないという「心情」を、記憶の最後のページに残して「意識」を失ったのです。私の「意識」が戻ったと思われたのは、目の前の大型スクリーンに波打つ波頭の「映像」が映し出されていることに気付いた時のことでした。大型スクリーンは、今や最新設備に置き換えられていますが、それは、かつての「私の船」の操舵室の前方のガラス窓であったのは間違いないのです。そして私はと言うと、左右の手首と足首を白い「革バンド」でしっかりと操縦席に縛りつけられているではありませんか。私の左胸の「心臓」の位置からは、先端にセンサーが埋め込まれた「計測針」がグルグルと渦巻きながら、体中に立てられていたのです。そして、その「計測針」は、私の身体をはみ出して「私の船」全体に、その「精密検査」の関心が向けられているかのように、やはり渦巻いて張り巡らされていたのです。右には「魚群探知機」が置かれていて、左には「心電図」が刻々と変化する私の「心臓」の状態を報せていました。しかし、周りの医療チームの期待の熱い「視線」を裏切るようにして、私の「心臓」は健気にも規則正しいビートを打ち続けていたのです。もう一度、前方のスクリーンに「視線」を移すことにした私は、スクリーンがスクリーンを通して、あちら側の「世界」を映し出していることに気付いたのです。そして、その「あちらの世界」とは、私自身の「脳細胞」であり、私自身の「記憶」が閉じ込められた未整理のファイルの中に存在する「世界」のようでした。そのファイルは、海面を漂う「クラゲ」の姿となって、半透明な「ぶよぶよ」した塊となって、いくつもいくつも波動に身を委ねながら集団で移動しているのです。水平の海面の遠方に漂う「クラゲ」の群れは、半透明と言うよりは、むしろ空にたなびく「白雲」が水面に映し出されているような、物質感の伴わない実体の無い存在のように視えるのでした。そうこうしている内に、近くに近付いて来たクラゲが大きく映し出されました。そのクラゲの姿をした「袋の中」には、いつかどこかでの「記憶」がいっぱいに詰め込まれていて、それらの「記憶の断片」が「くるくる」と攪拌されながら、内部で回転しているのです。そして驚くべきことは、その袋たちの中では固有の「時間」と「空間」が形成されているように窺い知ることができたのです。つまり、それぞれの記憶の集積された「時間」と「空間」の中で生きることにより、それぞれの「文化」とも呼べる知覚システムが生まれているようにも思えたのです。一つの「袋の世界」では、真っ赤に紅葉した落ち葉の上を白い蛇が「するする」と動いていました。そして枯れたブナの木の梢には、色鮮やかな色彩のキツツキが「コツコツ」と木を勤勉に叩く姿を観察することができました。私が咄嗟に想ったことは、「この世界」は未だ私の経験したことのない知覚の世界であり、この薄気味悪く、死の臭いすら漂う世界から、一刻も速く目を背けることだったのです。しかし、私の「身体」をしっかりと固定している、この憎々しい手枷と足枷が、黒色に変色しつつあることを、私は既に知覚してしまったのです。
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by artbears | 2007-10-23 20:04 | 夢白


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