夢博士の独白



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黒テントのピラミッドが乱立した海辺は、すでに象たちの群れに占拠されていた。

近代的な都市のウオーターフロントには、銀色に輝くかぼちゃの馬車を模したモノレールが縦横に走っているのです。その光景がそれほど珍しいものでないと感じたのは、私が赤道直下の発展目覚ましいアフリカのとある都市から帰国したばかりだったからかもしれません。そこには、たくさんのかぼちゃが象の大群の襲来により踏み潰されており、その「パックリ」と開いた割れ口が、痛々しくも至る所に曝け出されていたのです。そして、モノレールの動きが、自然の規則性に照らし合わせてのことか、必ず巻貝のように左に旋回しながら軌跡を描いて走るところも、自然のグローバリズムの浸透を感じさせる所以でもあったのです。モノレールは大きな溜息とも取れる停車音を最後に完全にロックが架かった状態となり、解体という次の工程を予感せざるを得ない、まるで棺桶の中のような空気が車内を支配したのです。ポルトガル語と想われる、太陽との会話に使われたに違いないと想われる言葉が耳元で響いたのと同時に、ドアはいっせいに開けられて、人々は無言の内に外に向かって吐き出されたのでした。時差ボケと不慣れな義足のためか、どんどんと大勢の人々に追い越されながらも、私は一歩一々を確実であることを心掛けながら歩き、やっとの想いで、入口の天幕が風に大きくなびいている、見上げるばかりの巨大なピラミッドのような黒テントの前に辿り着いたのでした。そしてそうした巨大な黒テントが、この海辺一帯に数多く張られていることは、周りの黒い肌の若者たちの会話から察しがついたことなのです。それぞれの黒テントは大きく息をしているかのように、膨らみ、そして縮むことを繰返しているのです。それは、彼らの長年に亘る不平不満が極に達していることを、どす黒いエネルギーが噴出するはけ口を探し求めて渦巻いていることを、戦争の前夜のような緊迫した情景の内に、私に報せていたのです。そして時折、黒テントが大きく膨らみ、左右対称の天幕が開いた合間をぬって、飛び抜けていく銀色に光る戦闘機は、そのことを私に確信させるに十分な光景だったのです。4列縦隊となって、足元の暗がりだけを見つめていた私が、天井の高いドームのような空間に居ることに気付いたのは、象の雄叫びと想われる甲高い金属的な音が、空間を切裂くような鋭さで反響した時のことでした。我々の隊列の左右両側には、ゴムのような弾力を感じる黒々とした象の足が、陽の差し込まなくなった密林に残された大木の根株のように、整然と、しかし我々を威圧するかのように並んでいたのです。そしてそれら無数の象の足からできた深い暗闇の林からは、血走った赤い目をしたアルビノと想われる白い痩せ細った犬たちの視線が、「ジィーッ」とこちらを窺っていたのです。その眼差しに気を取られていた私を再び驚かせたのは、あのポルトガル語の響きだったのです。我々は次々に、大小さまざまな丸太を切断して作られた腰掛に座ることを命じられ、それらの腰掛はゆっくりと、打寄せる波の引き際にタイミングを合わせるように促されながら、海へと旅発って行くのです。丸太でできた腰掛の舟の中には、その重心の位置によりバランスを失うものもあり、多くの黒い肌の若者たちが海中に投げ出されるという、まさに運命のサイコロの転がり方の非情さを目撃することとなったのです。その時、突然の大波の発生とともに、黒い葉巻を巨大にしたかのような潜水艦が浮上して来たのです。そしてその潜水艦の潜望鏡が神経質に回転している様子を見ていた私は、その潜望鏡に取り付けられた分厚いレンズの曲面に、はっきりと、西欧の着飾った貴族たちの舞踏会の様子が映し出されていることを目撃したのでした。そしてこの「格差」への絶望感を胸に抱きながら、私は大波に身を委ねて、再び浜辺へと打ち上げられることを願ったのでした。私の願いが叶ったことを知ったのは、私が波打ち際の砂の中に埋もれている自分を発見した時のことでした。砂浜には、桟橋を急ごしらえにカタパルトに転用したと想われる飛行場があり、そこからあの銀色に光る戦闘機がまさに飛び立たんとしているのです。そしてそのパイロットのヘルメットから覗く、眼光鋭く血走った目こそ、あの白いアルビノの追い詰められた目に他ならなかったのです。
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by artbears | 2007-06-19 17:58 | 未白


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
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