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夢博士の独白



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二本の線路の一方を走る逆円錐形の物体は、白銀の世界へと駒を進めた。

緑色のこんもりとしたお茶碗を伏せたような山が、いくつも点在している平野が拡がっているのです。晴れ渡った空の青さは、海からの照り返しの色を映し出しているのに違いありません。そして白雲が速度を急速に増しながら、次から次へと頭上を通り過ぎ去って行くのです。二本の真新しい青光りする鋼鉄製の線路は、それらのなだらかな小山たちの頂上を通って、波打つような起伏を形成しながら、海へと向かって伸びているようです。その鉄道の線路のような軌道の上を、逆円錐形をした銀色の駒のような物体が回転しながら近づいて来るにつれて、その巨大さの全貌が明らかになって来るのです。その回転体は、その鋭利な先端部で線路の巾のちょうど中央部を削り取って、軌跡の左右の僅かなズレを後方に残しながら、前方にゆっくりと進んでいるのです。その物体に走り寄って詳しく観察してみると、それは超硬度のチタン製のネジクギを巨大にしたかのような物体であることが判明したのです。そして見上げて観ると、ネジの溝の部分が通路となって、螺旋を描きながら逆円錐形の天上面に向かって巻き上がって行っているのです。その光景は銀色に光り輝く竜巻のようでもあるのです。用心深いと自認している私は、しばらく熟考していたのですが、突然の稲妻のような衝動に促されて、その通路に飛び乗ることを決意したのです。そしてその決断こそが、私に想わぬ体験を強いることとなったのでした。飛び乗った瞬間に、その通路は歩行エスカレーターのように作動を始め、自動的に私を上方へと押し上げて行ったのです。そして前方に待ち受けていたのは、なんと口を大きく開けた竜の頭部であり、その牙からは粘着性のある半透明の唾液が滴り落ちているのです。竜はこの竜巻のような銀色の巨大な駒の通路を棲家にしていたのでした。私は自らを放り出すかのようにして、真紅の炎のような竜の舌に絡め捕られることを欲したのです。竜は数本に枝分かれした舌を上手に使いながら、ネバネバした唾液を線状にして私の身体に巻き付け、蚕の繭のようなカプセルの中に私を納めたのでした。最初は息苦しかったカプセル内に酸素が充満して来るように感じるようになったのは、私と背中合わせになったもう一つの生命体の存在を感じた時だったのです。彼女の体温は呼吸の回数が増えるにしたがって、次第に高まっているように想われました。恐らく、彼女は穏やかな闘争を好まぬ性格の持ち主であり、その植物のような犠牲的精神により、カプセル内は共生可能な地球的な環境に調整されつつあるのだと考えたのです。私の精神は肉体を離れ、限りなく透明な世界へと近づけると確信できたのもこの時でした。そうこうしている内に、カプセルは竜によって丁重にどこかに運ばれて行くのを感じました。逆円錐形の物体の天上面には十字の深い溝が掘られており、そこには大小さまざまなカプセルが規則正しく並べられていたのです。私たちのカプセルは99番のナンバープレートが付けられたものであり、このカプセルを最後に巨大な駒は線路を逸脱することになっていたようです。銀色の駒は竜巻となって、氷山の絶壁を飛び越え、海面が凍結した氷原へとスピードを上げて突入して行ったのです。氷を砕く凄まじい音とともに、巨大な駒は水面を割り、その自重ゆえに海面下へと水没して行ったのです。それとともに、数多くのカプセルたちは四方八方に飛散するかのように解放たれたのでした。氷の破片が浮かぶ海面を上方に見ながら、私たちを乗せたカプセルは、「クルックルッ」と軽やかに回転しながら、ワルツのテンポに合わせて未知なる世界へと向かったのでした。
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by artbears | 2007-04-30 18:12 | 未白


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