夢博士の独白



カテゴリ:自然( 3 )


被災した空港と海港、幻影のグラスと実影のカモメ、増水した河川の対岸に咲いた藤の花

飛行機に乗るという苦渋の決断を下した私の「眼球」には、きっと溢れ出た「涙」の一部が残っていたのでしょう。そのためもあって、この飛行機の小さな「窓」から見えるはずだった海岸線の「光景」が、あの潜水艦の小さな「窓」から見える白濁した不気味な「世界」の様に見えたのではないかと思ったのです。それほど、この「視界」を遮るお先真っ白の「状況」は、残酷なる「現実」の直視を阻むものであったと言えるのです。そしてもしかしたら、この水蒸気を多量に含んだ「雲海」の層は、地表にまで達しているのではないかとさえ思えたのです。飛行機は左に旋回して着陸態勢に入り、人っ子一人見当たらない「空港」の滑走路には、静まり返った真空状態の「空気」だけが漂っている様に感じられました。そして、空を飛ぶ「鉄塊」はドスンと音を発てて「大地」に降りたのです。多くの夢の「世界」で起こることのように、滑走路はいつの間にか高速道路へと変貌を遂げ、気付くと、私の「視線」はタクシーの「窓」から見える、遥か彼方の海岸線に釘付けにされていました。そこには、「歯」が不規則に抜けたように林立する、かつての防風林が見え、その向こうに在ったはずの「海港」からは、数隻の「船舶」が、あたかも瓦礫で出来た「荒海」を漂流する難破船のように運ばれ、無惨にも「荒野」に打ち上げられていたのです。そして、それらの海に浮ぶ「鉄塊」は、あの夢の「世界」でも決して起こり得ないこととして、数十台の「自動車」にランダムに取り囲まれていたのです。私は、この「光景」の背後にある膨大な「自然」のエネルギーの存在を思い知りました。と同時に、これらの物体間の相互関係があまりに希薄なこともあってか、物体としての個別の「重量」が消失しているという奇妙な感覚を覚えたのです。そして、この凄まじい「光景」は、まるで「運命」の明暗を峻別した白黒写真のように、高速道路を境とした西側と東側の「世界」の対照性を際立たせていたのです。「言葉」を失った私は、溢れ出る「涙」に語らせるしかなかったのです。このモノトーンの「世界」が、ようやく「色彩」の復活を果せたのは、あの懐かしの「記憶」ファイルを何枚もめくり、あなたも見たという「景観」との再会を待たなければなりませんでした。私はタクシーから飛び降り、何かに急き立てられる想いで、船着場への歩みを速めました。そしてそこで、時代を経ても変わらぬ「松島」の、私の「記憶」とも寸分の違いもない、穏やかで心安らぐ「風景」が無傷で残っていることを確認したのです。そして、西方浄土へと沈み行く「太陽」の放つ朱色の「光線」は、深い悲しみに遭った人々への温かい眼差しのように、慈悲心に満ち溢れていたのです。やがて、その「光線」はいくつかの束に収束して、この松島の「湾」全体を包み込むように、さながらベネチアン・グラスの巨大な「器」となって、私の眼前に立ち現れたのです。その「幻影」の「器」の内部では、美しい島影と奇石や赤松の織り成す造形美、その中を自由に飛遊するカモメなどの「実影」が、散り嵌められた「宝石」のように光り輝いていたのです。このベネチアン・グラスを手に取り、内部を覗いて見たいという「欲望」が湧き起こったのは、恐らく帰路の新幹線での「夢」の中であったと想うのです。ハッと気付くと、「記憶」の洪水は止めども無く「器」から溢れ出し、その増水の勢いは「河川」の水嵩を一気に高める「濁流」と化したのです。あらゆる「記憶」が「濁流」に巻き込まれて、猛烈なスピードで後方に流されて行きました。しかし振り返ると、この増水する「河川」に架けられた一本の「橋梁」が不動の佇まいを見せ、その「景観」は、私たちに一種の安堵感を与えてくれたのです。そもそもこの「河川」の両岸には、二本の小道が古から通っていたようです。そして、軽自動車がやっとの想いで通れる西側の小道には、難を逃れて引き揚げられた数隻の「木造船」が前途を妨げていたのです。その上、生き物のようにヒタヒタと波打ち寄せる「水流」は、私たちに増大する「自然」への恐怖感を抱かせずにはおかなかったのです。私たちは、前進するか後退するかの「決断」を迫られていたのです。その時、私の残された「記憶」ファイルから浮び上がった「光景」とは、対岸に咲いた薄紫色をした藤の花房の野趣に富んだ美しさだったのです。それは、あの松島の「自然」に通じる穏やかで心安らぐ「風景」でもありました。そしてきっと、山肌に沿って小高い位置を走る東側の「鉄道」からは、この狭く心細い西側の小道がどこに通じているのかを、「俯瞰」できるに違いないと思ったのです。
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by artbears | 2011-05-30 19:03 | 自然

Y字型の焼け焦げた木立、白鳥の世界に出現した黒鳥、王の入場を固く閉ざした城門の扉

暗闇には、忍び寄る「気配」を消そうとする意図は無かったのです。しかし、紅色の「流星」が垂直に尾を引きながら間歇的にしかも集団で落下を始めたため、その暗闇の階調の変化は、自ずと夜の「濃度」が刻々と深まっていることを報せていたのです。様式的には西洋の「庭園」への進入部分のように想われる「道路」の両側には、黒く焼け焦げた木肌を露わにした「木立」が整然と並んでいました。それらは、まるで戦意を喪失した「敗残兵」のように見窄らしく視え、途中で「切断」されたY字型の二本の幹は、絶望の「記号」を暗闇の中に浮び上がらせていたのです。暫く歩くと、中央に大理石の「噴水台」が置かれた円形の「広場」に出ることになりました。そして、その周囲にも、無数の「木立」は無言で取り囲んでいたのです。見えざる敵の「気配」が、この「広場」全体に充満していることは確かでした。小鳥達のさえずりは止まり、小動物は草むらに身を潜めたのです。すると突然、青天の霹靂とも呼ぶべき「事態」が何の前触れも無く起こったのです。紅色に燃え盛る「流星」が「広場」を目掛けて忽然と飛来し、「噴水台」に猛然と突入し、大理石で彫られた「ダビデ」の上半身は木っ端微塵に砕け散ったのです。斯くの如くして「日常性」は崩壊し、人の手に負えない「不確実性」が出現し、世界は一瞬にして「異次元」に移行してしまったのです。「ゴリアテ」は、外堀が既に埋め立てられ、内堀だけになった「城砦」を最後の寄り所として、反撃の機会を窺っていたようです。「流星」は、そのことの「予兆」でもあったとの解釈も成り立つのです。そして、下半身を露わにして天を罵る「巨大兵士」の姿を観た私は、視ることは視られること以上に悲しく痛いことだと思ったのです。この「非日常性」が、この「恐怖」への刺激だけを繰り返す生き物のような「映像」が、私の「体内」に取り込まれることを「拒絶」する方法はないのかと思ったのです。「ゴリアテ」の背後には、4基の超立方体の「構築物」が一定の間隔を保って規則正しく並んでいました。それらの「構築物」の上屋根は吹き飛ばされ、焼け爛れた鉄骨の合間からは、黒い鉛製の入れ子状になった「格納器」が見え隠れしていたのです。そして、見えざる敵の「気配」は、この「格納器」の亀裂から外部に放出され、一部は、可視化された黒いドロドロの「液体」となって流出していたのです。それは、あちら側(3・11)からこちら側(9・11)へと架けられた「跳ね橋」の周辺を「汚染」することになったのです。やがて、その重油のような粘着性と弾力性を兼ね備えた「液体」は、鎌首をもたげた黒い「毒蛇」となって、「水面」をS字型の「軌跡」を描きながら泳ぎ始めました。その時のことでした。背後の暗闇の中で秘かに咲いていたはずの「夜桜」に突風が吹き荒れたのでしょうか、無数の白い「花弁」が花吹雪となって、「水面」に舞い降りる「光景」が眼前に拡がったのです。その無数の「白鳥」の集団にも見立てられる「光景」は、平均と標準偏差によって「リスク」を正確に評価できるとした「正規分布」の世界のようにも観えたのです。穏やかな「水面」には、いつもの想定内の「日常性」が復帰したかのようにも想えたのです。しかし、「ブラックスワン」は、やはりそのタイミングで、確率分布が適応外の異常な「現象」として、私の「脳内」の暗闇から忽然と姿を現したのです。あの「毒蛇」が「黒鳥」へと突然変異を遂げたのです。私は、「白鳥の世界」に「黒鳥」が次々と出現するという、何とも遣り切れない「世界」を「幻視」してしまったのです。その時のことでした。「投石」するにも上半身を失った「ダビデ」の入場を固く「拒絶」するかのように、「跳ね橋」はガラガラと音を立てて上がったのです。そもそも「投石」することで解決を見出せた「世界」は終わっていたはずなのです。そして、「大手門」は永遠に閉されることになったのです。こうして、「退路」を断たれたことに対する増大する「不安」を抱えた私は、思わず、残された「進路」を振り返って観たのです。すると、「搦手門」から視える「光景」は、私を身震いさせずにはおかないものでした。4基の超立方体の「構築物」が一定の間隔を保って規則正しく並んでいたのです。そして、その背後には、雄叫びを上げる「ゴリアテ」の後姿が、モクモクと立ち昇る「噴煙」の合間から視えたのです。私は、驚愕の思いで立ち竦みました。なぜならば、この私の「脳内」の宇宙的空間に浮かぶ「城砦」は、相似形を描きながらも、実は、同一のパターンの繰り返しであることを「直感」したからに他ならなかったのです。
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by artbears | 2011-04-30 18:52 | 自然

暗闇としてのトンネル、未知の構築物と見知らぬ人々の想い、暗い道に燈る新しい心の灯

新幹線が真っ暗闇のトンネルの途中で停まったのは、突然の出来事だったのです。子供達にしか見えないはずの白い頭巾を被った「道化師」が、車窓から「車内」を注意深く覗き込んでは大きな「溜息」を吐いて、小さなキャベツのようになった「頭部」を両手で抱きかかえて、私の目の前に差し出したのです。私と彼を隔てるものは、一枚の硬質なガラス窓でした。「頭部」があったはずの白い頭巾の元の「場所」には、もう一つのトンネルが「ポッカリ」と空いていたのも、当然の出来事だったのです。トンネルの「内部」には逆光を背にして数人の「人影」が浮かび、それらはまるで、白い紙を切り抜いて作られた「人形」のように、頼りなく見えたのです。彼らの足下には、水が「ヒタヒタ」と押し寄せて、やがて、彼らはトンネルの「内部」に引き返すようにして姿を消しました。すると突然、前方にある自動ドアが音も無く開き、慌てふためく「道化師」を追い掛けるようにして、「波濤」が「車内」に雪崩れ込んで来たのです。一瞬にして、それまでの「車内」の間延びした「空気」が、一変したのは言うまでもありません。そして当然、同乗した「乗客」はふ、未来に対する漠然とした「不安」が現実として表れ、それまでの居心地の良い「秩序」が崩壊し、「車内」に緊張感と喪失感が漂い始めたことに気付いたのです。私は、後方の車両に消えた「道化師」こそが、私が怯えながら抱いて来た「妄想」の「化身」であったと、振り返りながら想ったのです。新幹線の通路は夥しい数の「瓦礫」を運ぶ「水路」となりました。そして、私の座席の足元にも水は押し寄せて、あの白い「人形」が「クルクル」と回り続けていたのです。それにしても、この既視感のない「瓦礫」の山で造られた「構築物」を何と呼べば良いのでしょうか。それは、木材や鉄骨、それにケーブルなどの様々な「物質」が意外な結合の仕方を見せて、ある種の自己増殖的な「ネットワーク」が形成されているようにも観えたのです。そして、ブリキ製の「自動車」や「飛行機」などの文明の「利器」が、ちっぽけな「玩具」として、至る所に散在していたのです。それは、未知で不可解な「存在」や「現象」が、あたかも説明可能であるかのような「幻想」を与えて来た「近代科学」の虚を突いた「構造」を呈していたのです。全く「想定」を超えた突然で、今となっては当然な出来事が目の前に立ち現れ、私の「意識」は覚醒を強いられたのです。と同時に、「車内」の水位の急速な上昇に気付いた私は、他の「乗客」と一緒になって、この「構築物」に登る「決断」を下したのです。「構築物」は、まるでジャングルジムのように複雑性の中にも、ある種の規則性が観察される「構造」になっていて、何よりも、他の「乗客」との未曾有の「危機」への「体験」を共有しているという「意識」が、この「構築物」への信頼感と安定感につながっていると思えたのです。かなりの高さまで登った「段階」で、眼下を恐る恐る見下ろすと、そこには、黒く濁った水が白い「波濤」を獰猛なサメの「口腔」のように見せながら、暴れまくっていました。ブリキ製の様々な「玩具」が、それらの「犠牲」になったことは言うまでもありません。そして、堅牢な大黒柱に画鋲で止めてあった、あなたからの手書きの「メール」に気付いたのは、私が次の「段階」まで難を逃れようとした矢先の出来事だったのです。次々と高い「位置」に貼られた「メール」を読みながら、私は、離れた「場所」でいったい何が起こっているのかを知り、何よりも、見知らぬ人々とも、心の「ネットワーク」でつながっていることを感じたのです。「悲劇」に襲われている人々の苦しみや悲しみへの想像力が、そして、悲痛な困難に遭遇している人々への同情心が、私の「内部」から湧き起こっていることを感じたのです。そして、私は、この「メール」に託された人々の「想い」に勇気付けられ、「地上」に這いずり出ることが出来たのです。「構築物」は新幹線の天井を突き抜け、まるで茨の「枝木」のように増殖し、地面に出来た「亀裂」に沿って北上しているように観えました。実は、私の「夢」はここで中断されたのです。しかし、私が「夢中」で歩き続けたことは間違いありません。そして、「夢」が再び起ち上がったのは、三つ目のトンネルを前にした「場面」からだったのです。トンネルを通して視える向こう側の「夜景」は、いつもより街の「灯」が落とされた暗く、静かなものでした。見知らぬ人々が見知らぬ人々を想い、一つの「灯」が消されたに違いありません。私には、仮に夜道が暗くなっても、人々の心には新しい「灯」が燈ったように見えたのです。
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by artbears | 2011-03-27 20:29 | 自然


ソフトマシーン・やわらかいきかいのひとりごとです
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