夢博士の独白



森のなかの一脚の椅子、言葉に依って繋がる裏表の世界、思考のなかの一輪の薔薇の花

 晴天の「青空」を裏に返すと満天の「星空」に置き換わっている。それは、靄のような「欲望」が薄く長く棚引く「夢」のなかに於いては、往々にして起ることでした。それが朝方なのか、それとも夕方なのか、その無意識の「欲望」は教えてはくれない。その「欲望」は何かの「出現」の機会を与えているに過ぎない。「森」のなかの頑丈な一脚の「椅子」に沈み込むようにして座ったという「記憶」だけが、「私」の周りをゆっくりと回っていたのです。
 再び、トランプを素早く切る「手」が浮かび上がって来たのです。カードは手早く配られて、テーブルの上の複数の「手」が忙しく動いている。カードを表に返すと、赤い「戦闘機」が「青空」を飛行している。カードを裏に戻すと、青い「潜水艦」が「星空」を潜行している。巨大な鼻孔のような「暗闇」では、犬のような「顔」の白い「男」がしきりに指をパキパキと鳴らしている。彼に手の内を明かしてはいけない。言うまでも無く、他の二人の「顔」も「暗闇」に隠れて良くは見えなかったのです。
 時折、上目遣いの「視線」が、何かを催促するように投げ掛けられるのです。ほとんど聞き取れない「言葉」が行ったり来たりしているのです。それが儀式なのか、それとも遊戯なのか、「夢」のなかの「私」には答えようもない。トランプという「言葉」が無ければ、その「行為」の「意味」するところは見えては来なかったのです。
 「夢」のなかに於いても、「言葉」の存在は大きなものでした。その「世界」の環境は、この「世界」の自然とは異なる「次元」に成り立つものでした。ディテールはほとんど無視されていて、そう、「宇宙」のような曖昧模糊とした「空間」でありながら、その比喩される「概念」自体が既に「言葉」によって創られていたのです。
 それでは、この人工的な夢幻の「世界」に於いても、「言葉」の内には「命」があり、それは人を照らす「光」と成り得るものであろうか。「私」は「光」を求めて前後左右を見回しました。蝋燭の外炎のような、白黒映画の残影のような朧げな「光」は感知すれども、それは決して「暗闇」のなかで輝き、暗黒の「闇夜」に打ち勝つものではなかったのです。
 トランプを切る「手」が消えて、その「名前」が浮かび上がって来たのは、その後のことでした。彼がキングなのか、それともジョーカーなのか、そのことは「予知」できない。全てが「闇夜」のなかで決められようとしている。スリーカードが揃わないことに「憤懣」を抱き、「寛容」を失った白い「男」は、一人二人とカードをテーブルに叩き付けて立ち去ったのです。目の前には、無骨な一脚の「椅子」だけが残されている。ダークサイドの「拡大」が続いている。
 私の「意識」が「森」のなかの「椅子」に戻ったのは、暗黒の「深海」に沈潜していた「意識」が何かの「浮上」の機会を得たからに違いない。それは、強く鋭く射し込む「光」だったのかもしれない。仄かな「光」に包まれた「椅子」だったのかもしれない。
 私は「森」という抽象的な「概念」のなかにいたのです。つまり、一つとして具体的な木々の「名前」が想い浮かばない。この裏の「世界」では、表の「世界」の「言葉」に即物的に反応することはあっても、観念的に「世界」を創造することはなかった。万物は「言葉」に依って成り立つことは一つとして無かった。万物の「意味」は見えなかった。
 もしかしたら、私は無知蒙昧なる「大海」のなかにいるのかもしれない。時に「海面」に漂い、時に「深海」に沈んでいる。「視覚」をしても、「聴覚」をしても、「嗅覚」をしても、万物の「本質」の欠片すら掬い取ることはできない。私はどこから来て、どこへ行こうとしているのか、そのことを誰も教えてはくれない。
 私の「網膜」に朱い「人影」が転写されたのです。私の「思考」が「光」を分析して、その「虚像」を見せるのです。それが「虚像」なのか、それとも「実像」なのか、何れにしても、彼女も「闇夜」を歩いているのは間違いない。その「姿」は、まるで一輪の薔薇の「花」のような「沈黙」に満たされている。その「沈黙」は、あらゆる「言葉」を以てしても語り尽くすことはできない。
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by artbears | 2016-11-30 19:54 | 連白
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