夢博士の独白



連鎖する時間と絵画の構造、楽園又は現実となった死、入口である出口に立ち竦む裸体

 超越的な「存在」、そのように「記憶」のなかで観える「高山」も、やはり「夢」のなかの「教会」のように垂直に起立していたのです。それは、西欧の建築的な「原理」に基づいているのかもしれない。「過去」から「未来」へと連鎖する「時間」は、「現在」という仮初めの「箱」に一旦取り込まれている。どこまでも奥行きの在る三次元の「空間」に閉じ込められている。そして、ある時に忽然として連続性が断たれて、その時に毅然として垂直性が建ち上がる。瞬時にして「全体像」は把握される。それは、西欧の絵画的な「構造」に基づいているのかもしれない。
 私は歩くことは厭わなかった。走ることですら、さしたる「苦痛」ではなかった。しかし、後方を向いて「前方」に歩くことはできても、前方を向いて「後方」に走ることはできない。そう、私は「川」を挟んだ「堤防」を「下流」に移動していたのです。想定外に水嵩を増す「水流」に「不安」を覚えながらも、瞬きもしない間に訪れる「未来」が、想定内に収まることは祈るしかなかったのです。
 まるで「絵巻物」のようにして、「川」は一方向に緩やかに流れて来たのです。ゆっくりと「時間」と寄り添うようにして、「物語」は語り継がれて来たのです。そして、明らかに「現在」は「過去」と線的に連鎖していた。「絵巻物」はさらに巻き解かれて、人々の「記憶」のさらなる蓄積を促した。人々は「梅園」に集い「桜園」に酔い痴れて、そして「現在」の延長線上の「未来」を想い描いて来たのです。その先には、「楽園」としての「死」が想い描かれていたのかもしれない。
 プッサンの「絵画」が、私の目の奥に浮んで来たのです。豊かな「理想郷」に忽然と建ち現われる「墓標」、三人の「牧人」と毅然と立ち振る舞う一人の「恋人」、「生」と「死」が対比されて、「過去」と「未来」との対話が始まる。「過去」と「現在」と「未来」が一つに合体して、その「構造」が示される。「永遠」のイメージが起ち上がって来たのです。「私」はアルカディアにいたのです。そして「死」も「理想郷」にいるのです。「死」は片時も忘れることのできない「現実」となったのです。
 両側の「堤防」を無数の人々が歩いていました。一人として「上流」に引き返せる「人間」を見付けることはできない。何と従順な、それは、まるで飼い慣らされた「牧羊」の群れのように見えたのです。そして、「川巾」は次第に狭くなっていく。「水流」は次第に激しくなっていく。その先には、真っ暗闇のトンネルの「入口」が、一方向に空いた真円の「出口」が待っているのが視える。「瀑布」となって落下するであろう「死」、それに立ち向かう「覚悟」が問われていたのです。
 ほとばしる「液体」、それは「汗」と呼ぶよりも、「身体」に付着したゼリーのようでした。「次、次の人体」、その「声」は、胸の悪くなるような「悪臭」を放っていたのです。無数の人々が無言の「行列」に繋がって、裸となった「私」の前後には、血の気の失せた青白い「裸体」が並んでいたのです。「次、次の裸体」、その「声」は、「砂漠」のように白く乾いて、「深海」のように黒く虚しい。私は「人体」なのか「裸体」なのか、私は叫び声を上げる。それでも目覚めない時には、その「声」に従うしかない。
 恐らく、誰にも理解してもらえない、いや誰もが理解したくない「現実」が、私の「夢」のなかにも「存在」しているのです。この「行列」から抜け出ることができるなら、何でもできる。私の「悲鳴」は、私の「夢」のなかの「私」にしか聞こえない。
 私は並ぶ、私は叫ぶ、私は乞う、その「苦悩」は、夜毎に「私」を強い眼差しで見詰める「彼等」の「視線」のなかにも映えている。すでに「裸体」となった「私」は、これから「死体」となる「私」と手を握り合うしかないのだろうか。そして「裸体」に残る「体温」が、冷たい「死体」を温められる「時間」は、どれほど残されているのだろうか。それでも目覚めない時には、あの「声」に従うしかないのだろうか。
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by artbears | 2016-04-29 14:01 | 連白
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